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相模湾キハダの攻略について

最近はコマセ釣りが絶好調のキハダ。近海で50キロ近い大物が狙えるだけあって、平日でも満船となるほどの人気ぶり! 初挑戦でも運良く仕留められることもありますが、コンスタンと釣るためにはいくつものノウハウが存在するのも事実。よりキハダに近づくためにはどのようにすれば良いでしょうか?

【タックル編】

コマセで狙う場合、ハリ掛りさせるまでの食わせの要素もしっかりと考えなければいけません。意外にバランスが重要です。

ロッド

強烈な引きゆえに強靭なロッドを想像しがちです。たしかに間違いではありませんがいくつか抑えるべきポイントがあります。 まずはしっかりとコマセを振れなければなりません。オススメは2メートル前後の7:3から6:4調子くらいのグラス系ロッドです。バット部にしっかりとした張りのあるモデルがファイト時に魚をコントロールしやすいでしょう。できるだけワンピースに近い専用ロッドが安心です。 最近はメーカーで保障ハリスや最大ハリスが記載されているモデルが増えてきたので、だいぶ選びやすくなっています。ただメーカーによってもダイワのように最も強度がでる角度での計測なのか、アルファタックルのように破断しやすい角度での計測なのかで記載に差があるので注意しましょう。 また他魚種からの流用の際はバット部の長さにも注意。主に深場ロッドですが強度は十分でもバットの長さが非常に短いとロッドエンドを腹部に当てて巻き上げようとすると非常に窮屈です。一部のモデルではバットを付け替えられる場合があるので、最適な長さを選びたいところです

柔軟な穂先と強靭な胴を併せ持つ青物ロッド
ただパワーがあるだけでなく操作性も抜群です

リール

マグロの引きをロッドで受け止たら、巻き上げるのはリールの仕事です。 高負荷にも捩れない剛性と力強く巻き上げるギア、そしてスムーズに過負荷を逃がすドラグは不可欠。 ドラグの滑り出しに優れたレバードラグの手巻両軸リールがメインですが電動リールが使う人もいます。 手巻きでは回収とやり取りに優れた2スピード変速モデルなども。ラインキャパは最低でも8号300メートル以上は用意したいところです。

 

金属ボディで高剛性を誇るリールは存在感があります。

PEライン

道糸となるPEラインは8号を標準とし、12号までの太さを300メートル以上は巻きたいところ。これは掛かってからのマグロが走るため、どうしても長さが必要となります。 リールのラインキャパをオーバーするようなら、太さより長さを優先。ルアーでは6号でも100キロ近いマグロは上がっています。選ぶ際には信頼のおけるメーカーのものを。無名の激安品ではマグロを相手にするには無謀です。
そして少しでも痛んできたらその部分はカットし、常に強度維持に気を配ります。また見た目が傷がないようでも一度使ってしばらく間の空いた古いPEラインはご用心。繊維の中に染み込んで結晶化した塩分や、スプール面に発生しやすい錆が思わぬラインブレイクを招く場合があります。マグロは千載一遇のチャンスと勝負する釣りです。多少もったいなくとも安心できるラインを巻き直しましょう。

テンビン

様々なテンビンが販売されていますが、おすすめは全遊動型のカモシテンビン。全遊動の利点を説明してみましょう。

・ハリスの強度が活きる
マグロが疾走した際にコマセカゴやテンビンが引っ張られず、ハリス強度を最大限に活かします。

・微細なシグナルを伝える
高感度 アタリがミチイトにダイレクトに伝わるので感度が非常に良く、キハダのアタリを明確に捉えます。

・オマツリに強い
通常はテンビン部がオマツリしたらラインが出せず終わりですが、カモシテンビンではラインを送り出せるのでオマツリに対処しながらやり取りが可能です。

このようにマグロ釣りには多くの利点があります。ただカツオなどの最後まで走る中型ターゲットは少々苦手。取り込みの際にラインを引き出されやすいので、テンビンを持って寄せずカモシラインのリングを取ってそのままハリスを手繰り寄せましょう。

 

カモシ天秤は専用のカモシ遊動ラインと組み合わせて使用します。
船宿によってはハリスが手繰りにくい、オマツリされると外しにくい等の理由から
使用が規制されている場合もありますのでご注意ください。

コマセカゴ

ただコマセを詰めて沈めるだけではいけません。それぞれの特長を理解し使いこないしましょう。まず大きく分けてプラ製と金属製があります。前者は下部の開度を調整し、後者は穴をゴムで埋めてコマセ放出量を調整しています。 おすすめは「ステン缶」や「テッカメン」といった金属製のもの。これはコマセの出方の関係で上部の穴より水を取り込むまではプラ製も同じですが、そこからのコマセ放出がプラ製では下部の穴より滑り出るので拡散性が低く、アピール力に劣ります。それに対し金属製は穴から放出するのでビシ周りにフワっと拡散するのでアピール力に優れています。

・L80号
船宿指定のもっともオーソドックスなコマセカゴです。ミチイトも指定号数を使用するなら、このサイズを用意しましょう。

・L100号
船宿推奨よりも太いPEライン10~12号のミチイトを用いる方は是非用意していただきたいサイズです。これはラインの角度を合わせ、落下速度を高める為です。自身のメリットも多く、他乗船者とのオマツリといったトラブルを防ぎます。

・FL80号
通常のコマセカゴより一回り細いサイズで、水中での抵抗が少なく仕掛けを素早くタナまで届けます。移動が非常に速い群を狙うには最適でしょう。また潮流の抵抗を受けにくいので速潮でもタナボケを最小に止めます。

・調整用コインオモリ
潮流が非常に速く仕掛けが吹き上げられてしまったり、群れの移動がとにかく速い場合のお助けアイテム。コマセカゴに入れるだけなので必ずタックルボックスに忍ばせておきましょう。

また手返しのインターバルをより正確にする為にもコマセカゴの放出量は確実に把握しておきたいところです。慣れている釣り人はシャクリ動作の負荷の変化でコマセの有無を判断し、振れる回数と強さを決めていると思います。 ですが水面で満タンから振ってどれぐらいで無くなるのかも見ておきたいところ。意外と投入時にコマセが漏れ出していることがわかると思います。 またロスを減らすためにもコマセの詰め方にも一工夫。通常は詰めずに緩く入れて、出すぎる場合に詰め気味に調整してます。そこをコマセカゴの上下を詰め気味に入れて、真ん中を緩めに入れるようにします。 私はステン缶ばかりですが、これをすることによって投入時にコマセカゴ上部に発生する負圧による流出と、シャクリの圧力によって下部から押し出させるコマセを最小に抑えています。 その日のコマセの硬さや潮流によって詰める圧力を調整していますが、基本となる考えは「シャクリによってコマセカゴの中で水流を回す」こと。その上でタナまでのロスは最小に抑えたいところです。

ハリ

大型に対処しなければならないことから、太軸のハリは外せません。口も大きいことから魚体を見れば大型フックを用いたいところです。しかし、注意しなければなない項目も多くあります。

 

・ハリの形状
キハダを掛ける上で意識すべきことは「口に掛ける」です。基本は手持ちで釣るスタイルですが、アタリが散発の状況では置き竿にしてしまったり、手持ちでも油断すれば飲まれてしまいます。 飲まれにくくするだけならハリ先が内側に入り込んだムツ型が効果的。しかし針掛かりを考えれば針先はストレートを選びたいところです。

※おすすめのハリ:ひらまさかんぱち16号・ムツサークル1/0号・
ゴリラ3/0号・メジ・カツオケイムラ16号 など

・ハリの強度
マグロのパワーを受け止めるなら太軸ですが、際限無しに太くしては重くなる一方。強度を保ちつつできるだけ軽量なハリを選びたいところです。 高強度を唄うハリはパッケージに対応ハリスや使用強度を記載しているものも多くあり、それらは一つの選択の目安となるでしょう。また表記のないハリでも軸の線径や平打ちなどの加工である程度は予測できます。購入時にわからないときは近くの店員に質問すると良いでしょう。 さて素材強度のあるハリほど重いもの。潮が無い状況ではハリは天秤から真っ直ぐ垂れ下がり、明らかに食いに影響がでます。これを解決するには重量を浮力で相殺すること。チモトへ浮力のある「東邦産業)ケイムラ玉ソフト」を装着するのが一番簡単でしょう。紫外線発光のアピールも加わり効果的です。

・結び方
強度のある結びができなければ、どんなにハリやハリスが強くても意味がありません。太軸ハリに太ハリスしっかり結ぶコツは一巻き毎にしっかり力を込めて巻くこと。結びに弛みが生じれば、力が均一に掛からず綻びを生み、強度低下を招く結果となります。 「南方延縄結び」や「坂本結び」など有名な結びも多数存在しますが、管付も鐘木もオススメは「フィンガーノット」です。この結びはハリスの本線が全てハリを巻く糸の内側に入り、表面の凹凸が通常よりも少なくなります。外側に縦のラインが全く無いためマグロの歯に拾われず、瞬殺や秒殺で切らることが少ない結びです。用途や強度もハゼからカジキまで対応し、実に汎用性があります。南方延縄結び・外掛け結び・内掛け結びなどで瞬殺ブレイクに悩まされる方はぜひお試しください。
またラインエンドは必ずライターで焼いて抜けを防止すると同時に、熱した直後の焼玉をハリに押し付けてハリとの段差を最小限に抑えましょう。こうする事でオキアミをスムーズに装餌できるようになります。

 

どんなに強度がある結びでも切られては意味がありません。
「何故切られたのか?」をとことん追求すれば自ずとマグロに近づきます。

ハリス

市販仕掛けではコスト面からもナイロンを用いたものがほとんどですが、おすすめはフロロカーボンでしょう。 耐摩擦性の強さは擦れに強く、長時間ファイトでマグロの側面を擦り続けても強度を保ちます。また屈折率が水に近くラインに張りがあるので警戒心緩和と捌きやすさを併せ持っている点も見逃せません。 長さですが現在は3~6メートルを指定する船宿が多いかと思います。私の推奨は3メートルです。「長くすれば食う」わけではありませんがロングハリスが現在は人気。コマセカゴが何個も浮いている海中は明らかに不自然。またアタリも一日で船中10回未満なので長くしたくもなるのでしょう。ですがそれでキハダの食いが変わるかといえば、それほど差のないように感じています。それよりもハリスが長すぎてオマツリを誘発したり、取り込みでバレるシーンを度々目撃しています。短いと食わない不安より、長くて水面でバラすリスクを減らした方が釣れる確率は高まります。

 

多少高価ですが大型マグロが釣れるなら安いもの!?

 

ノウハウの詰まったショップオリジナル仕掛けもフロロカーボンハリスを使用

接続器具

ハリスをテンビンに接続する際のスナップやスイベル類も強度にこだわりたいところです。様々な形のものが市販されていますが、トローリングスナップ(写真左)やハワイアンフック(写真右)を用いることが多いでしょう。おススメはトローリングスナップ。このモデルの強度は申し分なく、着脱も容易なのでオマツリの対処も楽。相模湾キハダなら5号や6号が最適です。次いでハワイアンフックは抜群の強度を誇り、値段も比較的安価で入手しやすい一品。ただ着脱はコツが必要で、素早く行うならプライヤーは必須でしょう。釣り場で多く見かけますが気を付けたいのがインターロック付きスナップ。このスナップは着脱しやすさと表示強度や値段はまずまずなのですが、瞬間負荷に開きやすく、サイドにワイヤーが出ているため、手繰る際に怪我を誘発します。脇役的な小物たちですがマグロの引きを受け止める重要なパーツなので妥協せず選びましょう。

付けエサ

「付けエサはオキアミ」ここで思考を止めてしまっては釣果向上は難しいでしょう。マグロと直接接する部分だからこそ一層の拘りを持っていただきたい部分です。 まず付けエサとなるオキアミは「大粒」で頭がしっかりと詰まった「形状が整っもの」であり、各部の「欠損が無い」個体を選びます。釣り具店ではブロック状のものと選別パックがありますが、オススメはブロック状のオキアミです。これは同じ単価でもエサの量は圧倒的に多く、良質な個体を多く拾うことができます。選別パックは一度解凍された状態から選別されるので鮮度的にやや不利で価格も割高となります。

・解凍
ブロック状のオキアミを購入したら、釣行日前日なら冷蔵庫でゆっくりと溶かして下さい。冷凍食品を解凍するように扱います。ブロックの内側と外側で温度差の激しい解凍方法はNG。透明感が失われ白っぽくなってしまいます。 現場で解凍する際は日陰で解凍が無難ですが、急いでいることもあるでしょう。ビニールに包み海水バケツで解凍することが多いと思います。外側は温度差も大きく水圧で潰れるので付けエサには適しませんが、内側は十分に使えるでしょう。 もっともオキアミにダメージが大きい解凍は循環海水ホースを入れたバケツに袋から開けて出して解凍する方法。見た目は水圧が掛からずフワっと仕上がりますがオキアミの温度が一気に上がってしまうので、その後の鮮度低下は明らかです。

・加工
鮮度に注意し解凍したブロックから良質のオキアミを選別できたらマグロに適した加工を施します。 まずは尾羽付近のカット。ハサミを使って切り口が潰れないようにスパッと切断します。切断面は自身が用いるハリがしっかり入るサイズになるよう調整が必要です。太軸のハリでは斜めにカットすると切断面が大きく刺しやすくなります。 エサもちを優先するならアミノソルトのような添加材を使用するとオキアミの身が締まり、太軸のハリでも潰れにくくなります。ただし掛けすぎると硬くなりすぎるので要注意です。 また付けエサを目立たせるために紫外線加工も常套手段。移動が速くやる気のある群を追う状況に有効で、振り撒かれたオキアミの中から紫外線発光で目立たせ、魚に的を絞らせます。

・保管
「選別」「加工」を経て魅力的に仕上げた付けエサのオキアミも、そのまま船上で放置しては傷んでしまいます。しっかりと鮮度を保つ意味でも、保管はタッパーに入れてクーラーボックス。必要分だけを小分けに出して使います。 オキアミはマグロにとっての「食品」です。人間のそれと思えば自然と丁寧に扱えるようになります。

・疑似オキアミ
最近では特船オキアミやスーパーオキアミといったゴム製のオキアミが存在します。コマセマグロ釣りでは太軸ハリのチモトまでしっかり刺せるので愛用者も多い一品です。そのままでも良いですが一工夫すると更に効果的。特船オキアミならカラーチューニング、スーパーオキアミは頭部への夜行玉挿入などが効きます。

  

 魚との接点となる部分なので最もこだわりたい部分です。

 

【実釣編】

捕食動作を考える

コマセ釣りではコマセワークが非常に重要なのは言うまでもありません。セオリーとなる撒きかたは船宿指示通りですが、まずはターゲットがどのような泳ぎ方でエサを食うのかを理解しなければなりません。

・キハダの補食動作
ターゲットのキハダマグロですが見た目は紡錘型でいかにも高速遊泳に向いている身体つきです。実際泳ぐ速度は凄まじく、針掛かりしてからの抵抗は強烈です。
ではエサを食うときはどうなのか? ということですが、遊泳力の強い魚系を襲うときは良く映像であるような凄まじい速度で下から上へと突っ込んでゆきます。派手なボイルやジャンプが見られるのもこのときです。
そしてオキアミを食うときはというと、現在の相模湾のような飽食状態ではかなり遅い速度で補食していると思われます。意外に思われるかもしれませんがシラスを飽食状態で襲っている時のキハダの遊泳速度はボラ並です。それこそ人の歩く程度の速度になります。となると下から突き上げる奇襲的な補食ではなく、ゆったり横方向に泳ぎながらエサを食っているのでしょう。このことから移動が速く食い気のある群は縦を意識しコマセを撒いて下から突っ込ませる感じに。逆に飽食状態で食い気があまり無い群はコマセマダイのようにポロポロ出すほうが効果的かもしれません。

最初は「60~80メートル」と船長より幅をもって指示されたタナも、船側に群れが近づくと「反応入ってくるよ」と予告から「75mぐらい」といった細かい指示に変わります。あまり忙しなくコマセを打ち返していると大型個体に警戒されやすいだけでなく、通過のチャンスを逃しかねません。指示タナ変更に仕掛けを合わせる準備はもちろん、常に一振り分ぐらいのコマセはビシに残しておきたいものです。

合わせ

予告があると程なく船内にアタリが訪れます。アタリは穂先に「コン」と短く軽い衝撃、もしくは「フワフワ」と揺するような振動がきて一寸間をおいて「ズドン」とロッドを絞りこんできます。この際、ヒラマサバリのようなハリ先が立ったハリの場合は、走る前のアタリで合わせを入れるのが理想的。ムツバリのようなハリ先が内側に入ったハリは「ズドン」とロッドが絞り込まれてからでも高確率で口元に掛かります。
もしアタリを感知し損ねていきなり走られた場合、走っている最中に鋭い合わせは厳禁です。これは飲み込まれてハリスに歯が当たっていた場合、鋭い衝撃は自らハリスを切断するようなもの。走りが止まってからグイっとロッドを絞り込むように力を掛けるのがポイントです。これでハリスやハリが口の際に移動しやすく、がっちりと掛けて獲ることができます。重要なのは口元にしっかりとハリを掛けることですが、飲み込まれて喉元に掛かったと思っても諦めてはいけません。
硬いマグロの口に掛けるにはそれなりの力が必要ですが、合わせの力の掛け方は押し刺すイメージです。重量を感じたらそのまま力を込めましょう。鋭く貫くような合わせはすっぽ抜けやハリス切れが多く感じます。

ヤリトリ

・ドラグテンションのコントロール
掛かったマグロは猛烈なスピードで疾走します。それこそスプールからライン全てを引き出すほどです。しかし慌ててはいけません。走るなら走るだけだしてしまいましょう。
掛かってからのポイントは「相手の体力を先に尽きさせる」につきます。その為にはマグロの特徴を把握しておく必要があります。マグロは高負荷でゆっくり短い距離を走らせるより、低負荷でも長い距離を走らせたほうが体力を消耗します。初期ドラグは3キロ前後が妥当でしょう。
そして体力が尽きてくるとマグロは首を振って抵抗します。このときロッドを叩くような振動が伝わるので、このシグナルを見逃さないように注意しましょう。
そうしたらドラグを増し締めし、ポンピングも入れずに一気にゴリ巻きます。マグロは体が硬いので一度顔を向けてしまえば、後は尾ビレを振ってもこちらに向かって巻き上げのサポートをしてくれます。
しかし油断は禁物。隙を与えたらヒレで軌道を変えてしまいます。こうなると再び顔を向けさせる際に余計な抵抗をされバラシの危険性が高まります。ポンピングをするならショートストロークを心掛け、隙を与えないように細心の注意を払いましょう。

・電動リールの注意点
空巻きの利便性や体力不足から電動を用いることもあるでしょう。しかし現行モデルはだいぶ改善されたとはいえ、電動リールは剛性面・ドラグでは中級以上の手巻きリールに劣る傾向にあります。
ボディはモーターや配線が組まれているために、構造的自由が少なさから剛性が十分確保できず、手巻きがいまいちの物も。ドラグも小径ワッシャーを多板式に納めているので最大ドラグ力の数値が出ていても、滑り出しや持続性ではレバードラグ式のような大口径ワッシャーを採用するものには大きく劣ります。そしてマグロを相手ではその引きによって釣り座の移動を余儀なくされる場合も多く、電源確保も悩みの種です。このようなハンデを背負ってマグロに挑むことを認識しなければなりません。
ファイトは電源や場所的な制限が無ければロッドキーパーに預けた状態でのファイトが確実です。電動リールに十分なパワーがあるのなら、そのまま巻き上げてしまう方法が最もバラしが少なく上がってきます。パワーが足りなければロッドをキーパーのサポートに固定した状態でのポンピングで対処。ロッドを手で起こし、巻き上げスイッチを入れながら倒し、止めます。
これでもパワーが足らない場合は電動リールの巻き上げをアシストに使いながら手巻きで勝負することになります。事前に確認しておきたいのはモーター作動中の手巻き。電動自転車のようなアシストするモデルと、手巻き速度を加算する増速モデルが存在します。
最後の難関は残り数十メートルの手巻きです。高負荷の勝負となればスプールに巻かれるラインは締め込まれて小口径化し必然的にカウンターは狂います。ですので電動巻き上げではほぼ確実に10~20メートル手前で止まることとなります。ここをしっかり巻き取れるかどうかが最後の難関です。

・サメの猛攻を突破せよ
さて現在の相模湾は残り30メートルが鬼門となります。ここから水面まではサメ多数。酷いときは船下に数匹が待機し上がってくるマグロを狙ってきます。
無事に切り抜ける最重要項目は素早く回収すること。ロッドキーパーに接続し、ドラグを締めてゴリ巻きします。ポンピングは回収が遅くなるばかりかマグロを揺すってサメにアピールしてしまうので厳禁です。
ドラグを締めるとラインブレイクのリスクもありますが、ゆっくりやってはサメに襲われて頭だけになります。パワーファイトでヒットから5分と経たずに残り30メートルでは危険かもしれませんが、通常は有る程度走って体力を消耗しているので勝負を掛けましょう。
またサメに襲われ始めるとロッドが激しく叩かれるような振動がおきます。こうなると選択は二つ、更なる速巻きを敢行し被害を最小に抑えるか、マグロが元気なことを期待してドラグをフリーに走らせるかです。正直どちらも怖いですが何もしなければ全てを失います。覚悟を決めて選択しましょう。

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・取り込み
マグロが旋回して姿を見せれば後もう一息。テンビンをつかみ、ハリスを手繰ってゆきます。船長やネットマンと呼吸を合わせ旋回する円を狭めてゆきましょう。思わぬ疾走をする場合もあるのでハリスはいつでも手放せるよう一層注意が必要。危険なので絶対に手に巻いて手繰ってはいけません。ネットやギャフが決まれば釣り人の勝利。ネットは入る瞬間にハリスをゆるめて奥までしっかり誘導しましょう。

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マグロの保管と解体

やっとの思いで釣り上げたキハダマグロ。魚体が大きいだけにそのまま入れるなら大型クーラーボックスが必要です。しかし全員が大型クーラーボックスを乗せてしまえば、それこそ足の踏み場もなくなってしまうでしょう。
そこで最近の乗合船ではマグロを保管できる超大型クーラーや魚倉を用意し対応しています。釣れたらインシュロックやバンドなどで目印をつけて入れさせてもらいましょう。また港に戻ってからはマグロ解体サービスのある船宿も増えてきており、超大型クーラーがなくてもマグロに挑める環境が整ってきました。もちろん最高の食味を求めるのなら、魚体に包丁を入れず大型クーラーボックスにて熟成させましょう。現在の25~50キロぐらいまでのマグロなら熟成期間は約一週間といったところ。大型クーラーの置き場や氷の確保そして解体などそれなりに大変ですが、苦労に見合う最高の食味が待っています。また解体サービスにてブロック状で持ち帰った場合も熟成させて美味しく頂けます。その場合は酸化の早い血合いを切除し、キッチンペーパーにくるんでからビニール袋に入れて保管します。酸化を最小限に抑えるためビニール袋内の空気は極限まで抜き、キッチンペーパーは毎日交換しましょう。ちなみに熟成が必要なのは刺身などの生食なのでステーキやフライ、煮物などは釣った当日からOK。ですので焼き物などを楽しみながら、最後に生食の刺身や寿司といった順ならば釣った当日から毎日食すことができるでしょう。

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数々の幸運が積み重なって食べるマグロは最高の食味です

回遊の幸運をお見逃しなく

今年は釣れ盛った相模湾のキハダマグロですが毎年回遊してくる魚というわけではありません。まして姿を現してもコマセにつくまで時間が掛かるので今年のような釣れっぷりを見せたのは4年ぶりです。10月までの時点でコマセの最大魚は60キロ強。ルアーでは腸抜きで77キロまで上がっています。水温分布的には10月一杯までが釣期となりそう。回遊魚は釣れているうちが勝負です。本来ならば遠征でしか出会えない大物と、近場の海で渡り合える幸運をしっかりと楽しんでください。

 

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