1/24 これがリアル釣りガール企画?
●協力/ティカジャパン株式会社。かも
昼下がりの外神田、つり情報編集部。ティカジャパン株式会社でロッド・リールの開発を担当する営業部・吉田俊介さんとの茶飲みばなしからこの企画は始まった。
「沖藤さん。釣りガールって、どうなんですか?」
「どうもこうも。なんで?」
「いや、ぼくらができることって、何だろうと思って……」
吉田さんはいつもヒザに手を置いて行儀よく話をする。
「女性っていうか、船で一緒になる人ってだいたいオバチャンなんですけど『どんな竿がほしいですか』って質問すると、みなさん『釣れる竿』っておっしゃるんです。ははは」
額の汗をふくのがクセの吉田さんは、いつも困ったように見える。
「作っちゃえばいいんですよ」
「は?」
「だから『つれる竿』を作っちゃえばいいんじゃない?」
「…………」
釣れる竿。何でも釣れる万能竿を、真剣に作るのだ。
しばしお付き合いを。
A
女性や初心者、もしくは船に乗りたいけど船酔いが心配な人には波穏やかな東京湾奥や相模湾がおすすめ。
B
波静かな近場といえば小物釣り。しかも多種多様な釣りがあり1年を通して楽しめる。
C
とはいえ、釣り物が多いぶん、どんな竿を使えばいいか分からない。それぞれ竿を買うのは予算的に無理。ゆえに二の足を踏む、または諦めてしまう。
A、Bまではいいのだが、問題はC。釣り物が多いことは沖釣りの素晴らしい点なのだが、入門者にとっては道具、予算において大きな壁になる。
「カワハギとシロギスって1本の竿ではできないんですか? 同じ船宿から出ているのだから、できるのではないかと思って」
匿名希望の20代後半独身女性が釣具店で迷った末にメールを送ってくる(本当の話)。
皆さんは彼女を笑うだろうか。
話は飛んで15年前。入社したての私は当時の斉藤編集長から半田丸の「沖0号」を渡された。
「とりあえず、これでいい」
そう言われて、ウイリーシャクリからビシアジ、オニカサゴからヤリイカ、ヒラメからコマセダイからカツオまで、オモリ60〜150号の釣りは全部「沖0号」で釣った。
もちろん「沖0号」が最高の万能竿であることは確かだ。でも、それ以上に“この竿1本あればいいのだ”という自信がどれだけ新米記者の背中を押してくれたことか。
あるとき「沖0号」を見たベテラン釣り師が、「これは『つれる竿』だよね」と言ったのをよく覚えている。
今、女性たちに、または入門者に、翌日の乗船を不安ではなく、ワクワクしながら待つことのできる万能竿を提案することはできないだろうか。
◇
「365 日小物釣りができる竿、それが女性や初心者たちに贈る『つれる竿』。そんな竿を作りま
しょう、吉田さん」
「それ、いいですね! 具体的に釣り物、何ですか?」
「ライトアジとカワハギは必須、そうなるとライトマルイカも」
「なるほど」
「キスも釣れるようにしましょう。マゴチ、あ、アナゴも外せない。湾フグも、餌木ス
ミイカも、イイダコにハゼも……」
「……素晴らしい話ですが、クリアしなくてはならないことが多すぎやしませんか?」
「そこを軽やかに飛び越えるから『つれる竿』なんですよ。帯に短したすきに長し、でも、それがいいんです!」
「はあ……悪ノリしてません?」
「試釣はもちろん、デザインも女性に参加してもらって意見を取り入れましょう」
「それはいいアイデアですね」
「で、販売価格は1万円以内。女性は価格にシビアだから」
「えええ!?」
「1年後の発売を目指して、どんなプロセスで竿が出来上がるのか、連載で紹介しませんか」
「ちょ、ちょっと、返事を待っていただいていいですか……」
◇
その数日後、ティカジャパンから正式な返答がきた。
「やりましょう。1年後の発売を目指して」
かくして『つれる竿』プロジェクトは始動したのだった。