3/24 既製品からイメージを具体化していく。
●協力/かなりティカジャパン株式会社
「吉田さん、たくさん竿があるんですね。驚いたなあ!」
「沖藤さんの会社に本がいっぱいあるのと同じです」
「おれはこっちのほうがいいなあ! 竿とリールがたくさん」
日本橋人形町のオフィスビルにあるティカジャパン本社。
「既製品から近い物を選んでいただくことで、設計がだいぶ具体的になってきます」
吉田さんが机の上に並べた竿は十数本。
ここで今一度「つれる竿」の基本構造を再確認。
●ライトアジを中心としたグループ(オモリ25〜40号)と、シロギスを中心としたグループ(オモリ5〜20号)に1本で適応させるため、替え穂を採用、長さはスライドバットシステムを使って調節可能にする。
つまり穂先は2種作るのだが、胴=ブランクは1本。まずはそれを選ぶ。
ライトアジやライトマルイカに使うことを想定して40号オモリをぶら下げていく。軟らかいものは40号オモリでかなり曲がり込み、硬いものはわずかに曲がる程度。その中から2本の竿を選び出した。
●候補1=軽くてビンビン。カーボン98パーセントの高感度仕様のライトゲームロッド。
このブランクで作ったら面白そうだと思うのだが、ちょっと張りが強すぎるか。
「この竿は24トンのカーボンを素材に使っています。同じカーボンを元に、粘りを持たせたブランクもあります」
吉田さんが示したのが、
●候補2=カーボン75 パーセントにグラスをミックスしたブランクのライトゲームロッド。製品名は「WINDS船73ライト170HS」。カタログによればオモリ負荷表示30〜60号の7:3調子だ。
候補1の軽快さも魅力だが、こちらのほうが手になじみやすい。言うなれば、候補1はスポーツカーで、候補2は乗用車。
「ところで吉田さん、24トンとかって、どういうことなの?」
「カーボン素材の種類と思っていただいて差し支えありません。では、次は穂先を決めましょう」
私に詳しく説明すると長いと判断したか、とっとと次の作業に取りかかる吉田さん。
「こちらもオモリをぶら下げてフィーリングを確かめましょう」
まずはオモリ25〜40号、ライトアジやライトマルイカを想定したグループの穂先。
「最初は先径0.9ミリのカーボンソリッド……」
「おおおっ! これはビンビン手に伝わってきますね。この穂先、いいなあ!」
「ちょっと待ってください。『つれる竿』って、初心者でも安心して楽しめることが大前提ですよね? だとしたら、カーボンで細めの穂先は折れるリスクが高くなります」
「なるほど……」
「次は、先径0.9ミリ、グラスソリッドの穂先です」
「おお、こちらはそれほどビンビン伝わってこないけど、グラスソリッドだけに竿先がよく動いてくれますね。これで扱いやすいとなれば、初心者にピッタリだ」
というわけで、オモリ30〜40号用の穂先は、先径0.9ミリのグラス穂先が第一候補。これは一般的な沖釣り用の竿としてはいほうだ。
続いてはオモリ5〜20号の小物用の穂先。候補の竿に10号オモリをぶら下げていく。
「これは先径0.7ミリのグラスです。かなり繊細な反面、初心者が使うことを考えるとリスクが高すぎると思いませんか?」
削れと言われればもっと細くできます、と胸を張ると同時に、メーカーだからこそ分かるトラブルの前例から、吉田さんがすすめるのは先径0.8ミリ。
「う〜ん。確かにオモリ25〜40号用が先径0.9ミリなら、0.8ミリでいいのかもしれないけど、0.7ミリが捨てきれないなあ……」
湾フグやイイダコや落ちハゼを想定すると、10号オモリをぶら下げて「使いたい」と思わせる穂先はやはり先径0.7ミリ。
「ちょっとぐらいこだわったほうが『つれる竿』っぽくない?」
「分かりました。では、小物用の穂先は、先径0.7、0・75、0.8ミリと、3つのサンプルを作ってみましょう」
「え!?そこまでやってもらえるんですか。それにしても、竿づくりって、大変ですねえ」
「いえ、ここまでは簡単なんですよ、実は」