4/24 ガイドのモンダイ?
●協力/ティカジャパン株式会社なのに…
「沖藤さんが持っているなかで『つれる竿』にあたる竿ってあるのですか?」
「よくぞ聞いてくれました吉田さん。ジャーン、この竿で湾奧の小物を全部釣りました!」
取り出したのは『極鋭MCGAME180』。ベイト、スピニング両方に対応できる竿だ。
「それぞれの魚種での評価は別として、湾奧のオモリ40号以内の釣りは全部できるスゴイ竿です! ちょっと高価なのが玉にきずだけど」
「……(沈黙)D社さんですね……しかもメタルトップじゃないっすか(沈黙)」
ここはティカジャパン本社。
「なるほど、分かりました。ウチは替え穂でバッチリと、滑らかな、美しい調子の竿をつくってみせましょう」
つり情報を見るや奥さんに、「老け顔」と言われてしまった吉田さんのメガネの奥の眼に、プロとしてのプライドの炎がチロチロと燃えていた。
そして前回、既製品からイメージに近い物を選び出し、替え穂候補を3種類試作することが決定。同じ調子の穂先でも、先径が0.8、0・75、0.7ミリと、わずか0・05ミリ違うだけでフィーリングがガラリと変わることに驚いたのであった。
「同じオモリ30号をぶら下げても、わずか0・05ミリ先径が変わるだけでこんなに違うのです」
吉田さんに竿づくりの奥深さを教わりつつ、穂先選びは決定した。
◇
今回は設計図を前に、仕様について話を進める。
「おお、すごい! 設計図ってやっぱりカッコいいなあ」
「設計してみたら、バットを15センチ伸縮させることが大変難しいことが分かりました」
詳細は省くが、当初はバット部を15センチから30センチにスライド可能とする予定だったが、設計上20センチから30センチへのスライド幅が限界だったそうだ。
「それでもスライド幅10センチというのはティカでも初です」
現在、主要メーカーから出されているシロギス専用竿はグリップが20センチ以下。一方、ライトアジやマルイカに使われる竿は30センチほど。この2本を1本でこなす。
「まさに『つれる竿』専用設計のグリップですね!」
「違う竿をくっつけちゃうようなもので、大変なことです」
ガイド数は竿のカーブと糸当たりを計算して12個。
「ところで吉田さん、ガイドの種類ってどうやって選ぶの?」
「……実はですね、これこそコスト、つまり販売価格によってなんです」
明らかに聞いてほしくないことを聞かれた! という表情の吉田さん。
「リングはオールSiC?」
「……それじゃあ販売価格1万円以内は無理ですよぉ」リングとはガイドの内側の丸い輪のこと。道糸が直接当たる場所で、SiCリングが高級とされる。その単価を紙に書く吉田さん。それによるとSiCリングをふんだんに使うと、予算の大半を食うことが判明。
「じゃあ、フレームもチタンは無理?」
「ありえませんって! オールチタンフレーム、オールSiCリングのコストだけで予定販売価格をオーバーしちゃいますって!」
軽自動車にジャガーのホイールを履かせるようなものか。
「たとえが分かりづらいですよ」
と、言うわけで『つれる竿』のガイドは実用優先へ。
「オールステンレスフレームで、トップと元のみSiCリングというのはどうでしょう。それ以外は機能面で不足のないハードリングです」
販売価格からすれば、それでもギリギリとか。
「ところで、以前、竿先に負荷がかかったときはトップガイドよりも2番目、3番目のガイドのほうが道糸が強く当たるって話、してましたよね? なら『つれる竿』はトップをハードリングにして、2番目にSiCリングっていうのも実用的じゃないですか?」
「ううっ」
メガネを直しつつ、人なつこい笑顔で答える吉田さん。
「そこはまあ、やはり、トップにSiCリングのほうがイメージがいいってことで……」