5/24 プロト1号と名前と色のモンダイ
●協力/まだまだティカジャパン株式会社
「これが試作品です」
「おお! できましたか!」
昼下がりの外神田、つり情報編集部。いよいよ『つれる竿』の試作品=プロトタイプ第1号が上がってきた。
「でですね、ちょっとモンダイがありまして……」
あいまいな笑顔を見せつつプロトタイプを取り出すティカジャパンの吉田俊介さん。
「実は、穂先が先径0.9、0.8、0・75、0.7と、1種類多く作ってしまったのですが……」
「おお、多いぶんにはいいじゃないですか!」
さっそく真っ黒いプロト1号を出して穂先を確認、余分に作ってしまったという先径0.9ミリの穂先を継いでみる。
「いいですね、太くて安心感があって、よく動く!」
「予想外だったのですが、いいですよね? ライトマルイカにも使えるでしょ?」
続いて先径0.8ミリの穂先。
「こちらは当初から予定していただけあって、想像どおり、いい感じですね」
「そうでしょう!」
何よりもグリップを伸ばすとバットが30センチもあるからしっかり脇挟みができるのがうれしい。他の編集部員も脇挟みしては「へえ〜」などと感心しつつ通り過ぎて行く。
「まずは八景あたりのライトアジで、先径0.9ミリ、0.8ミリの穂先を比較しつつ、全体の調子やグリップをチェックしていく感じですね」
「沖藤さん、女性もテストしてくれるんですよね?」
「もちろんですよ。編集部員に女性がいないからって、心配しないでください」
うたぐり深い吉田さんに今一度、釣りガール(独身・推定20代後半)から届いた試釣の日程メールを見せる。
「で、吉田さん、この細い2本がシロギスモードの先径0・75ミリと0.7ミリですね?」
「あ、あ、それがですね、実はライトアジモードと同じ硬さで上がってきちゃったんです」
汗をふきながら慌てて説明する吉田さん。たしかに、穂先を継ぐとまるで9:1の極先調子のようにピンピンしている。
「うわ! これ、硬さが同じままで細くなっているから、衝撃的な竿になってますよ。たとえるなら、極細すぎるカワハギ竿」
「設計ではもっとクニュッとしなやかに曲がるんです。設計どおりにいかなくて、今、作り直させていますからっ」
吉田さん、釈明会見状態。
「これ、書かれちゃうんですか」
「はい。プロトで失敗したり、試釣で折れたりするのも開発の苦労やコストですものね」
「ま、まあそうですけど……」
◇
「ところで沖藤さん、竿の色と名前、そろそろ決めないといけないんですよ」
「ええ!?来春発売なんだから、冬ぐらいじゃないんですか?」
「何言ってるんですか。竿の名前を入れたり、塗装するために6月中旬には色と名前が決まっていないといけないんです」
聞けば竿やロゴデザインのほか箱を使う場合は箱のデザインや発注も夏前には終わらせなくてはいけないらしい。
「色は悩むけど名前は『つれる竿』でいいんじゃない?」
「……ネーミングは女性に意見を聞きましょうよ」
先ほどの釈明会見とは一転、攻めに転じる吉田さん。
「じゃあ、色はおれが考えましょうか?」
「だめです! それこそ女性たちの意見を参考に作りましょう」
釣りガールのために役立つ竿を作りたい。そのコンセプトだけは譲らない吉田さん。さすが職人である。
「分かりました。では、時間がないのでツイッターとミクシィとフェイスブックで公募してみましょうか!」
「いいですね! ネーミングが採用された方には完成品を贈呈いたします!」
6月15日を締め切りの目安に【拡散希望】で『つれる竿』の色と名前公募メールを回す。すると、女性釣り師が次つぎと協力を名乗り出てくれる。その反響には驚くばかりである。