16/24 最終サンプル登場
●協力/ティカジャパン株式会社、ですよね。
街路樹から落ちる銀杏のにほひが鼻をつく晩秋の外神田・つり情報編集部。ティカジャパンの吉田俊介さんがエレベーターから降りるなり、ガサゴソとビニール袋を剥がし始める。
「今日は最終サンプルをお持ちしました」
「おおっ! ついにできましたか。待ってましたよ」
取り出された竿はラメピンクに塗装され、グリップは赤とブラックのツートン、ガイドの前後には金の糸が巻かれ、グリップ各部にはゴールド&コパーのリングも装着されている。
「穂先はオレンジと白ですね」
「はい、先端部オレンジがライトアジなどオモリ30号を主体としたAタイプ、白がシロギスなどオモリ15号以内と主体とした
Sタイプです」
「なんで両方オレンジなの?」
「あ、いや、これはちょっと手違いで、すぐに作り直したものができます」
「それ以外は、この状態が市販品と思っていいのですね」
「はい(自信満々)。チェックしてみてください」
本来ならティカジャパン本社で済ませるチェックを編集部で行ってもらう。
「プロト2号に比べて若干軟らかくなってますね」
「はい。塗装、研磨によって若干変わります」
「プロト2号で『若干張りが強すぎる』って意見が出たとき、吉田さんが最終サンプルでちょうどよくなるかもって言ってた
のはこのことなんですか?」
「もちろんです」
どや顔で答える吉田さん。オモリ30〜50号を段階的にぶら下げてプロト2号と比較すると、最終サンプルは若干入り込む。
「ですが、プロト1号に比べたら元部から胴にかけての張りはかなり強くなっています」
「なるほど。三石忍に怒られませんかね。バンバンッてたたいて、弱いって」
「え!?大丈夫ですよね?」
不安に駆られてバンバンと竿をたたいてみる吉田さん。もちろん三石はそんなことで怒ったりはしない。
「第1ガイドを手前に持ってきたため、ラインタッチ解消です」
ガイドの位置と間隔もプロトから変更してある。試釣では様ざまな点がチェックされ、こうして改良されてくるのだ。
「そのほか懸案となっていたスライドバットの水抜き穴も開けてあります」
「さっそく試しましょう」
「ええ?」
流しに持って行き、最終サンプルをジャバジャバと洗う。
プシュー。
「大丈夫ですね。ちゃんと空気きてるし、もう乾き始めてます」
「もっと穴を大きくしたら、乾くの早いんじゃない?」
「砂利が入ったら終わりですよ」
「……失礼しました」
最後はデザインチェック。ブランクスには「MAGICAL☆ONE」の文字。裏にはつれる竿プロジェクトバージョン1
・03を示す英字。スペルOK。
「ところで吉田さん、思ったよりもピンク、暗くありませんか」
「ええ!?今、言われても……」
「ね? Yさん、ちょっと暗いよね、この色」
本誌アルバイトの女性Yさんに見せる。
「うわあ、カッワイイですね〜! すごくいいです!」
「……吉田さん、完璧です」
女性の意見に文句なし。
「実際、太陽光で見ると本当にきれいですよ。これ、男性でもほしくなります。きっと」
外神田の雑居ビルの屋上へ上がるオヤジ2人。
「おおっ! 本当だ。これはきれいだ!」
ようやく私も納得する。
「ところで沖藤さん、色いろパーツ付けて、仕様を変えていったら、予定していた定価が難しくなってきてしまいまして……」
スカイツリーを背に、突然打ち明ける吉田さん。
「それって、価格のモンダイ?」
「実は……そうなんです」
次号、2人して釈明会見か!?