今回私が挑戦するのは南伊豆石廊崎沖。当地の乗っ込みは例年4月からと言われているそうだが、今期は寒さの厳しいころから1〜2キロ級を中心に手堅い釣れっぷりを見せている。
　こりゃ乗っ込みまで待っていられない！
　と、手石港の米丸へ突撃したのは3月15日。
　当日の釣り人は我が国の四輪レース界の重鎮、坂東正明さんが率いる釣りチーム「爆釣坂東組」の4人と、山梨県からきた小沢敏彦さん、和子さん夫妻と私の7人。
　テンションが高めの私と対照的に坂東さんは至って冷静。それもそのはず、前日は本命が不発、船中でイサキとカイワリがポツポツ釣れただけらしい。
　そ、そんなぁ……でもさすがに2日連続はないだろうと自分にいい聞かせつつ、6時半の出船を迎えた。
　最初の釣り場は仲木沖の水深80メートル。肥田定佳（ひださだちか）船長は海面下70メートルの指示を出す。
　前日は波風ともに強かったそうだが、この日はおだやか。「春の海 ひねもす のたりのたりかな」と江戸時代の俳人.与謝蕪村は詠んだけど、当日の南伊豆の海もまさにそんな感じ。
　でも海の中までのたりのたりじゃ困っちゃう。開始から1時間経過したが、釣れたのはアジだけ。「うーん今日もおかしいぞ。昨日はアジなんか釣れなかったし……」と船長も困惑気味。
　そんな仲木沖に見切りをつけ、大瀬沖の50メートルダチにやってきたのは9時半。海面から40メートル下の指示で仕掛けを下ろすやいなや、右ミヨシの坂東さんのグラスワンピースロッドが海面に刺さった。
　タイですか？
　と尋ねると、「あんまりデカくねーけどな」とニヤリ。まもなく1キロ級が玉網に収まった。
　この1枚をきっかけに坂東さんの独り舞台が幕を開け、1キロ級、1.2キロ級と立て続けにマダイを釣り上げる。坂東さんの隣で竿を出す熊谷富夫さんも同級を手に安堵の表情。