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フィッシングライター◎山口 充
掲載号: 2009年10月1日号
スズキバリを使う理由
ハゼエサのマゴチの楽しさを堪能した石井さん。いやあ、よく釣る人です
エサの交換をためらうようでは、好釣果はのぞめませんぞ!
そろそろ秋本番の東京湾。
今回は後半戦を迎えたマゴチを狙う。この時期の魅力といえば、何と言っても大型が狙えること。おまけに今期は数もそこそこ出ているようだ。
9月5日に向かったのは東京湾奥鶴見の新明丸。数日前に台風が通過したばかりで、底荒れが心配されたが、人気のターゲットだけあり釣り人の集まりは上々。
宿に着くと常連でもあり、私の知人でもある上山さんにバッタリ。
「これで安心。上山さんのいぶし銀の技を見られるなんて……」と声をかけたが、
「ナニ言ってるの、バラシばっかりで……」ご本人は謙遜されていたが、マゴチをこよなく愛するベテランだけにきっちりと釣ってくれるはず。
舵を握るのは親方の新明利勝さん。釣りに対する情熱とこだわりは人一倍で、時がたつのを忘れてついつい話し込んでしまう。
左舷トモに石井さんと並んで座ってタックルを準備。大ドモに座る上山さんに、どんなハリがいいのですかと尋ねたところ、
「船長はスズキバリ16号をすすめているよ」とのこと。
ハゼエサで狙うときはチヌバリをすすめる船宿もあるが、新明船長は掛かりのよさを重視し、あえてスズキバリなのだそうだ。
「たしかにエサのハゼへの負担はチヌバリのほうが少ないですが、掛かりはスズキバリのほうが圧倒的にいい。ただしエサはまめにチェックしてください。弱っていたらすぐに元気なハゼと交換してくださいね」とのこと。
また仲乗りとして乗船している息子さんも、
「昨日はハリスをチモトで切られるバラシもありました。できることならチモトの部分は編み込みをしたほうがいいですよ」と付け加えてくれた。
出船は定刻の7時半。第二海堡周りのポイントへ向かう。
航程約30分で到着、エサのハゼが配られた。サイズは全長10〜11センチ。投入合図を出す前に船長はエサの付け方をレクチャーする。
口の中にハリ先を入れ、鼻へと抜くのだが、アゴの真ん中は硬いので、鼻の辺りの柔らかいところにハリ先が出るようにすると教えてくれた。
合図が出て投入。水深は6メートル前後。ハリスは1.5メートルで、底にオモリが着いたら1メートルくらい巻き上げたところで待つ。
水深は細かく変わるので、まめに底ダチを取り直すことを心がける。
しばらくすると右胴の間でヒット。船中1本目は40センチクラス。上山さんにもアタリがきたが、
「あれ、放した……」
上山さんは残念ながらハリ掛かりには至らなかったが、大ドモの嘉代さんが40センチ級を上げた。
「先生、このあたりで1本お願いします!」上山さんにプレッシャーをかけた矢先、
「アタった!」とつぶやき臨戦態勢に入る。
私がカメラをスタンバイしたところでビシッと合わせを入れる。決まった〜!
と思ったが、空ぶり。
しかしそこは名手の上山さん、私が見ていないところでコソッとヒットさせていた。なかなか強い引き込みで、
「いいんじゃないですか!」と声をかけるとニッコリ。
無事にネットに収まったのは54センチのマゴチ。夢中で撮影していると、
「山口さんの竿、アタってんじゃない?」と船長から声がかかった。竿を握った直後は魚の感触はなかったが、すぐに力強いアタリがきた。
「これは間違いない!」軽く竿を下げて、ラインにかかるテンションを少しばかり緩めてやると、強い引きに変わった。ここで合わせを入れて巻く!
「きたじゃない」と上山さん。
「よかった〜!」
息子さんにタモ取りしてもらったマゴチは33センチのかわいいサイズ。さっき上がった上山さんのマゴチとの差に思わず笑ってしまった。
石井さんの竿にもアタリがきたらしい。
「合わせようかな……どうしよう!」と迷っていたが、この迷いとドキドキ感こそがマゴチの面白いところ。無事に合わせを決めて釣り上げたのは43センチ。
石井さんは地方のルアーで大きなマゴチを上げているものの、エサで釣ったのは初めて。この釣りの楽しさにハマってしまうかもしれない。
Page1 スズキバリを使う理由
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