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[メバル、カサゴ、ルアーシーバス]
東京湾奥船橋出船 内木

じっくり根魚狙いのちジギングでファイト

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本誌編集部◎沖藤武彦
掲載号: 2011年4月15日号

メバル&カサゴ狙いは根魚との糸電話感覚

 


これからベストシーズンを迎えます!
震災後初出船となったこの日、船長が持ってきたのは自作の義援金箱だった


 地震の2日後、自宅前の県立公園で小学校を卒業する息子とキャッチボールをした後、公園の向かいに住む内木章人船長に電話をしてみた。
 お互い家族の無事をよろこびつつも、やはり話は被災地と営業再開に向く。
 船長にしてみれば一日でも早く仕事を再開したいのだが、果たしてお客さんが来てくれるのか、こんなときに釣りなんて、と言われないだろうか……逡巡しているのだった。
 遊漁船の船長にとっては船を出すことが仕事だ。私たちが会社でパソコンのスイッチを入れるのと同様に、船のエンジンをかけなくてはならない。
 それが、できない。できたとしても同業者が苦しんでいるときに、と思い悩んでしまう。その苦悩を知ったとき、私は今回の震災の広さと深さを身近に感じたのだった。
 その一週間後の3月20日。液状化を免れた船橋港の船着き場で、内木船長は震災後初となる出船の受け付けをしていた。傍らには厚紙で作られた白い箱が置かれていて、油性マジックで「義援金」と書かれている。
 そこには乗船料の一部とお客さんから預かった任意の寄付が収められる。集まった現金は船長が責任を持って義援金として振り込む。
 内木船長は私と息子も含む14人の釣り客にそのことを説明すると、恒例の釣り方レクチャーを始めた。
 釣り物はメバル&カサゴのち、シーバスのジギング。仲乗りの寺内さんがもやいを解いて7時過ぎに桟橋を離れた。
 所どころ崩れている護岸、傾いているプレハブや倉庫。私の住む船橋市も海沿いでは被害が出ている。その光景から目が離せず、緊張する。
 それでも港から出て、青空を映すナギの海面が広がり、船長がスロットルを開けて船がスピードを上げていくと、暖かくなってきた風と見慣れた遠景に気分がほぐれてくるのだった。
 
 本牧の堤防の角でメバル.カサゴ狙いは始まった。まだ早春とあって水深は30メートル台。2本バリ仕掛けに「ゴリ」と呼んでいる冷蔵された小魚と生きたモエビを付ける。ちなみに下バリはゴリ、上バリは場合によってモエビが有利とのこと。
 釣り方は簡単なようでもコツがある。基本的にオモリは海底に着けたまま動かさずにアタリを待つ。トーントーンとオモリで底を打つように小刻みに根歩きさせては食いが悪い。
 仕掛けを張らず、たるませずでアタリを待ったら、スーッと上げて、ゆっくり下ろして根歩きさせてやる。オモリが着底するとき、ガリガリッと伝わってきたら根掛かりに注意、もう一度ゆっくり上げて、下ろし直してやる。
 数回繰り返しているうちに道糸は斜めになってくる。そうなったら面倒がらずに仕掛けを上げて入れ直す。このときにハリスのヨレを取り、エサをチェックする。
 真剣に釣りの話をするのも久しぶりに感じる。
 最初こそアタリは遠かったが、こまめに場所をずらすとポツポツと釣れ始めた。
 20センチ前後のカサゴが主役で、時折良型メバルも釣れてくる。船長としてはもっとアタリがほしいところか。それでもじっと我慢で流し続ける。
 ポツポツのペースは相変わらず。見ていると、どうも食い込みが悪いらしい。オモリを着底させたと同時に食っているようなケースは少なく、アタリがあってもハリ掛かりに至らないことが多いようだ。
 基本的に引き込むまで待つ、向こう合わせの釣りだけにジリジリしてしまう。それでもオモリを着けたまま待ちすぎると根掛かってしまうし、アタリも遠くなる。
 このとき、さすがだなあと思ったのはトモのお2人。
 止めるときはしっかりと止め、ころ合いを見てためらわずに仕掛けを入れ直す。はたから見ると2人だけアタリが多いように感じるのだが、入れ直しのタイミングがよく、止め方もていねい。静と動にメリハリがある。
 息子にそのことを教えて、タイミングを真似るように言うと、すぐに1尾釣り上げた。親バカながら、たいしたものだと思ってしまう。
 船中14人中、私を除く13人が型を見たところで竿を出す。そして昼前に潮が効き始めたのか、食いが立った。
 本来ならここで写真を撮るのだけど、この日は夢中になって釣り続けてしまった。アタリがあって掛からなかったり、思いのほか大きなカサゴが掛かったり、釣りをするのが楽しくて仕方がなかったのだ。
 そして昼過ぎ、上げ潮が効いてシーバスが狙い目になると判断した船長はシーバスジギングへの転進を提案する。
 春の日差しの下、ナギの東京湾を走りながらオニギリを食べつつ、しばし遊覧船となる。


 

 


 

 

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