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[ハゼ]
東京湾奥発 木更津沖 吉野屋

江戸和竿で釣る 木更津沖のハゼ

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本誌APC(神奈川)◎平林 潔
掲載号: 2010年11月15日号

中通しの和竿の魅力 その仕様と購入方法

 


3メートル近い竿で15センチ前後の魚を釣る。この面白さは奥が深い
ハゼは東京湾を代表する魚。東京湾遊漁船業協同組合のシンボルマークにもなっている    
これは竿しば師匠の焼印
中通しの和竿の口金とすげ口


 面白いもので、素晴らしい引き味や釣趣は必ずしも魚の大小の問題ではない。小さな魚でもそれなりの道具で釣れば「オオッ!」と驚くような引き味を楽しむことができる。
 タナゴ釣りにしてもマブナ釣りにしても江戸の昔からの遊びの釣り文化は、効率を求める漁とは一味も二味も違った道具を創造し、それを継承し続けている。
 江戸前の海釣りの代表格の一つがハゼ釣りだ。ハゼ釣りに魅せられた釣り人たちが集うハゼ研もあって、競技会で腕を磨いている。
 ハゼ竿の穂先は、ハゼがフッとエサを口にした微弱なアタリが取れる敏感で軟らかなものでなくてはならない。
 加えて15センチそこそこのハゼを掛けても竿が満月に曲がって「オオッ!凄い大型だ」と釣り人を痺れさせる調子でなくてはいけない。要するに魚の引きを増幅するってことだ。
 そして、何よりも美しくて長持ちしなくてはいけない。釣り人は釣りと同時に道具の美しさも楽しむものだ。
 江戸和竿はそんな条件を満たす竿として、長い歴史を持つ。
 江戸和竿って何?ということについてだが、簡単に言えば江戸中期.天明3年(1783年)ごろに竿作りの店を始めた泰地屋東作(初代東作)の流れをくむ和竿師たちが作る竹の竿だ。
 何本かの竹を組み合わせて継ぎ、全体の調子を整える点に特徴がある。仕上げの塗りは本漆うるしで工芸的にもすばらしく、国の伝統工芸品の指定も受けている。
 ということだが実際に作者の名(ハンコという焼印や彫り)が入った銘竿となるとそれなりの値段がする。作者による違いもあるが3本継ぎでおおよそ7〜8万円以上はするわけで、2本セットでは14〜16万円以上の買い物となる。さらに上にはきりがない。そんなこともあって入門用とは言い難い。
 ただ使うほどに手になじむ上、メンテナンスさえ怠らなければ孫の代ひ孫の代まで使えるのだから決して高い買い物ではない。
 入門用にはいわゆるハンコなしの普及品を1本2万5000円程度で手に入れることもできる。2本そろえて5万円程度の買い物だ。ハンコなしといえども、江戸和竿の師匠が作った竿なので実用的には申し分ない。
 また「江戸のハゼ釣りは同じ長さで同じような調子の竿を2本持って釣るものだ」とされるが、数釣りの競技会でもなければ1本竿でのんびりと和竿を味わうのも悪くない。
 さて一般的には9尺(約2.7メートル)の3本継ぎが使いやすいだろう。7尺とか8尺程度の竿は2本継ぎが主流になる。
 ハゼ竿の穂先には布ほてい袋竹の穂先が使われる。継ぎにはインロウ継ぎと並継ぎがある。
 穂持ちや手元にも布袋竹を使った総布袋のインロウ継ぎが見た目もいいが、長い竿になると軽くするために矢竹を使って並継ぎにしたりする。
 すげ口と呼ばれる継ぎ部分は竹を紙のように薄く削ってあるので取り扱いは慎重に!
 2間(12尺、約3.6メートル)程度の長い竿になると継ぎ数も増えるが、逆に3尺から4尺の水すい雷らい竿と呼ばれる1本物の短竿もある。
 ハゼ竿の特徴は手元の糸巻きに糸を巻き、その先にある穴から糸を竹の中へと通して穂先の先端にある口金と呼ばれるパイプから糸を出す中通し仕様になっていることだ。
 竹や水牛の角を加工した糸巻きが一般的だが、黒こく檀たんを加工したり象牙やベッコウを使った高価な竿もある。
 細い布袋竹の穂先の中に糸が通ることに驚く人も多いが、当然のこと節が抜いてあって市販の中通しワイヤーを使って糸を通す。
 リールを使わずに糸巻きから糸を出し入れして調整する釣りを体験すると、リールがいかに重くて釣趣にもマイナスなのかを感じる。また一度底ダチを取ってしまえば、たぐった仕掛けをポーンと海に入れるだけでOKなわけで、リズムも速い。中通しだからガイドへの糸絡みもない。
 竿を継ぐときには穂先から継ぎ、抜くときには手元から抜いてゆく。継ぎ部分は節が左右交互になるように継ぐ。
 使った後は熱いお湯に浸して絞った手ぬぐいで下から上へとふいたら、日陰で3日ほど陰干しにして乾かせばよい。その後、竿油で軽く拭きあげるだけだ。すげ口にも油を付けて抜き差ししておく。
 竿に癖が出たりすげ口が固くなったりしたときは、竿師に依頼すれば調整してくれる。インロウ芯はしっかりと中まで入らなくてはいけないし、並継ぎの場合には黒く塗った部分が中まで入らなくてはいけない。スーッと入らない場合には無理をせず、すぐに調整に出すことだ。
 ハゼ竿を購入するについてのあれこれは、江戸和竿協同組合(☎03-3803-1893)に問い合わせるか、竿師の邦一さんのホームページ(http://members2.jcom.home.ne.jp/kuniichi/)を参考にするといいだろう。


 

 


 

 

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