だが、このころから雨が降り始めたうえに潮も止まってしまい食い渋りタイムに突入。そのため、アタリがあっても食い込まずにかみ跡が付いたイワシばかりが目立つようになってきた。もちろん、同行の女性アングラーもまだヒラメの型を見ていない。
　このままではまずいと集中指導をしていると、鈴木一美さんの竿に魚信が到来。
　「どうしましょう？ どうしましょう？」と動揺する彼女だが「そのまま。まだまだ」と合わせるタイミングをうかがい、グーンと竿が入ったところで「今だ。竿を立てろ」と叫ぶ。ガッチリとハリ掛かりしたらしく竿が満月となる。
　「キャー。引き込む。リールが巻けない」とパニックに陥りそうなところを、
　「竿尻を腹に当てて、竿を立てたままで巻いて。引いたら手を止めてもいいからあわてずに」とアドバイスしていると、ユラーッと茶褐色の魚体が姿を現した。
　スパッとタモ取りされた2.5キロのヒラメを見て「やったー」と興奮を抑えきれない彼女であった。
　直後に渡辺圭以子さんにも魚信が到来。こちらも見事に合わせが決まったのだが、初めて味わうヒラメの引き込みに耐えるのが精一杯。それでも必死のヤリトリの末に同じく2.5キロのヒラメを釣り上げた。その後、彼女は本日最大の3.5キロも仕留める大健闘。
　「もう最高」と話をしている2人に対して蚊帳の外に置かれてしまったのが、蓮見純子さん。これまでに何度も掛け損ないを演じていたのだ。
　原因は合わせを入れるときに恐る恐る竿を立てていたので、完全にハリ掛かりしていなかったのだ。
　見かねた仲乗りさんが、彼女の横にベッタリと着いてアシストをしてくれたお陰で、ソゲ級ながら2枚釣り上げることができた。
　やれやれと思っていると私の竿にも魚信。合わせを入れて巻き上げにかかると、やけに重い。その上一気に突っ込みドラグを滑らせる。
　「もしやこいつの正体は？」と思ったとおり釣れ上がったのは3キロのワラサであった。
　心配された天気もなんとかもって定刻の12時まで釣りができ、船中ヒラメの釣果は2〜11枚。それにイナダが多数。この日は思ったより潮が動かなかったこともありいくぶん渋かったようだが、魚の濃さは間違いのないところだ。
　
　12月1日になれば鹿島沖が全面解禁となるので、さらに好釣果が期待できるだろう。

［利喜丸］大川紘嗣船長