そして昼過ぎに水深15メートル前後のブロック魚礁の際を攻めると続々とタコが釣れ始め一人、また一人とオデコを脱出していく。そんな中、取り残されたのが自分と同行の兄の2人。
　1時半を過ぎると、もはや万事休す。しかし捨てる神あれば拾う神ありで、ここで船長が兄に「これに替えてみて」と新しいカニを縛ったテンヤを渡してくれる。するとなんと、1発で乗りが到来、1キロ弱を手にしてホッと一安心。
　それにしてもテンヤを替えた途端に乗るなんて。まあマダコ釣りではありがちな話だけど、釣れないときの気分転換ってやっぱり必要と再認識。
　これで残るオデコは1人となったわけだが、さてどうしたものか。実はこの日、自分だけがカニエサを使わず、持ち込んだ餌木とスッテで狙っていたのだ。もしかして一人勝ちを狙って欲をかいた罰だろうか。しかし、今さらカニエサに寝返ることは意地でもしたくない。
　ここで船長から再び救いの手。「これ、実績あるから使ってみて」とマダコ専用の餌木、タコやねんを貸してくれたのだ。そしてそして、奇跡が訪れたのは納竿10分前。これまでにない確かな手応えに、思い切ってエイヤッと合わせを入れるとガシッ！ 根掛かりである。「根掛かりする場所じゃないんだけどなあ。絶対タコだよ」と船長が船を回してくれる。しかし、なかなか外れない。船長に糸を渡して根掛かりを外してもらうと、
　「タコだ、乗ってるよ！」
　糸を返してもらってたぐり寄せると、確かに重量感が残ったまま上がってくる。
　取り込んだのは1キロ級。これにて船中全員が型を見て、午後3時に帰港の途についたのであった。
　釣果は0.3〜2.4キロが1〜4杯。別船では0が2名出てしまったが、マダコ釣りとしてはかなり優秀な結果であろう。
　それにしても、マダコ釣りは本当に最後まで分からない。皆さんも諦めずに小づき続けて年末ダコをゲットしてください！

［長崎屋］長崎昭船長