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本誌APC(東京)◎鈴木良和
掲載号: 2010年4月1日号
頭の中はみそ汁でいっぱい
頭のてっぺんからつま先までビショ濡れ。でも楽しかったなあ!
竿は7:3から先調子気味がおすすめ。硬めのシロギス竿やカワハギ竿が向いている
なじみの寿司屋で出されたカサゴのみそ汁。身はプリプリと弾力があって甘みがあり、ダシの効いた汁はまさに絶品だった。
ところが自宅でカサゴのみそ汁を作ろうにも、最寄りの鮮魚店ではなかなかカサゴが手に入らない。
ならば釣って食するまでよ!
と2月28日に訪れたのは東京湾奥金沢八景の新修丸。周年カサゴ乗合を出している船宿で、根魚ファンの間では評判の宿だ。
待合室に顔を出すと、常連さんたちが楽しそうに釣り談議に花を咲かせていた。皆さん気さくで、待合室がパッと明るくなるような雰囲気が宿全体を包み込んでいた。
定刻の7時半になり、7名で出船したが沖に出るとすさまじい波風である。しかも土砂降りの雨が容赦なく打ちつける厳しい状況だ。
到着したのは猿島沖の30メートルダチ。新修丸では常備エサとしてサバの切り身とドジョウが用意されているので、下バリにドジョウ、上バリにサバを付けて投入する。
今年のカサゴの釣れっぷりは例年以上らしく、連日頭30尾前後とのこと。
ご存じのとおり、カサゴは根のきつい場所をテリトリーとし、ジッと獲物がくるのを待っている魚。よって底を中心に狙う釣りとなる。
オモリが底スレスレをキープするように竿を上下させながらアタリを待ったものの、いかんせん打ち寄せてくる波で立っているのさえ辛い状態。なかなかイメージどおりの釣りができない。
恨めしげに空を見上げれば、雨が痛いくらいである。「この時期のカサゴは食いが浅いから、早合わせはしないでくださーい」と船長がアドバイスをしてくれた直後、私は根掛かりに襲われた。
この釣りでは根掛かりは付きもの。すぐに道糸をつかんでクイックイッと引っ張れば案外簡単に外れる場合が多いが、竿を上下させたり、もたもたと時間をかけていると船が流れて完全に外れなくなってしまうとのこと。「エイ、エイ」と道糸を手で引っ張ると、プチッとオモリが切れる感覚。すぐに巻き上げに移ると、「グググッ!」
あれっ?
魚が掛かっていた。うれしいことはうれしいのだが、アタリをとらえて掛けたわけではないので少々複雑な気分。
釣れたのは30センチのドンコ。みそ汁に入れるとコラーゲンたっぷりのドンコ汁ができる。
ふと周囲を見ると、高井さんが18センチのカサゴを釣り上げ、トモでは20センチのメバルを遠藤さんが抜き上げていた。
メバルはカサゴ釣りの定番ゲストだが、まさかこの悪条件下で姿を見せるとは思わなかった。
それから私は波に合わせて竿を倒したり起こしたりとやっていると、グググと明確な魚信が訪れた。
ひと呼吸を入れて竿を立てるとビビビッとハリ掛かりの手応えがあり、そのままリーリーングに移ると、20センチのカサゴが姿を見せた。
その後、一度掛け損ないがあった。その時操舵室に目をやると船長が真剣なまなざしでテレビに見入っていた。内容はチリ地震による津波警報。
風雨が収まる気配はなく、現在の下げ潮が上げ潮に変わればさらに波も高くなるはず。いつ早揚がりになっても不思議ではない。
そこで私は釣りをやめて写真を撮ることだけに専念することにした。
Page1 頭の中はみそ汁でいっぱい
Page2 皆さんすごい、すご過ぎる!
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