そんなこんなでいよいよ残りは1時間半。ここで私も道具を出すことにした。
　いまだに風は強くてウネリも高い。イカの乗りも今イチ。だからツノ数を増やすよりも手返しの回数を増やしたほうがいいと判断し、仕掛けは5本ヅノにする。
　するとオモリが着底すると同時にイカの乗りが伝わった。1杯だけではもったいないと、追い乗りを狙ったが後は続かなかったので巻き上げを開始する。
　時折ズンズンと引き込む感触を楽しみつつ抜き上げたのは胴長35センチ。仕掛けの中央に配した赤白のウキスッテに乗っていた。
　そして続いての投入でも、またもや赤白のウキスッテに乗った。さらに次投を試みるも、ここでイカの反応がなくなって潮回り。
　ちなみに当地では1回の流しが長い「ブン流し」が主流だが、後半は三浦半島や相模湾のようにまめに潮回りを行うスタイルに切り替えた。
　船長のこの判断が功を奏したようで、私は約1時間半の釣りで4杯ゲットに成功。うち3杯は前出の赤白のウキスッテ。少ない実釣時間、加えてこの乗り渋りで効果のほどは断定できないが、なんとなくウキスッテの有効性というか、実力を垣間見たようだった。
　沖揚がりは11時。本日の釣果は0〜16杯。ここしばらく好調が続いていた中で、思いもよらぬ大苦戦の一日となってしまった。下船後に船長は、
　「今日は一番悪い日に当たってしまったけれど、例年以上にイカの反応は濃いので5月の上旬ごろまでは釣れ続くと思います」と力強いコメントで締めくくってくれた。
　その言葉どおり、取材翌日はトップ38杯と模様回復、翌々日はトップ82杯の爆釣記録であったことを追記しておきたい。
　それにしてもイカというやつはやっかいだ。海に出てみないと分からないのだから。
　次回はせめてナギの日を選んで釣行してやろう。
　待ってろ、房総のヤリイカたち！

［第一松栄丸］中井一也船長