潮回りして次の投入。このあたりから乗りが遠くなる。高橋船長に聞くと潮の具合か、同じ反応でも乗りが悪くなってきたとのこと。しかし直ブラを使う私にはポツポツ乗る。
　よく言われるように、渋いときはブランコ仕掛けより直ブラのほうが有利なのか。断言できないついでに微妙な乗りを取ってやろうと浅場仕様の道具に替える。
　船中1人だけカワハギ釣りのようないでたちは少々違和感がある。周りから「巻き上げ大丈夫？」光線を浴びる。
　ところが、だ。この浅場仕様の道具は実に具合がいい。道具自体が軽く、オモリも50号、イカが乗ると竿先がグニョッとおじぎして、エイヤッと合わせると手首に重さがグインと伝わってくる。
　まるで乗りがいいときの浅場の釣り。これで楽しくないわけがない。水深が深いぶん手返しが遅く数はのびないが、巻き上げ時間が長いから感覚としては入れ乗りだ。
　電動タックルで釣っていた村上にこの道具を持たせると、あまりの面白さに手放そうとしない。大げさでなく、本当だ。
　前半の多くの時間を撮影やオモリ沈下テストに費やしていたことを思えば、20杯は上出来だった。
　初めてマルイカ釣りを体験したころに比べると釣り方や道具は本当に変わったものだが、思えばあの日も手巻きの両軸リールで20数杯を釣って、手首をさすりながら帰ったのだった。

［一郎丸］高橋 昇船長