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遠征釣りで見た!電動ジギングの威力

今年もイナンバにキハダやビンチョウマグロが回遊する季節となりました。ジギングで重いメタルジグを動かし続けるため若いアングラーが大半を占めています。「ルアー」というジャンルと、重たいジグを一日中操りマグロと勝負する体力的な問題から、敬遠されている餌釣り師も多いことでしょう。しかし現在の餌釣りタックルは初挑戦であっても十分な釣果を出せる性能を秘めています。

遠征船のエキスパートで挑む

4月に入ると漁海況速報で水温分布表とにらめっこする日々が続きます。例年4月から5月に掛けて黒潮が沿岸部に近づくことが多く、20℃の水温帯にキハダやビンチョウが乗っており、それがイナンバや御蔵島へ接岸すると一斉に遠征船たちが出船を開始します。遠征釣りでよく聞く「イナンバ」は伊豆諸島御蔵島の南西、伊豆半島先端から110キロメートルほど離れた海域に浮かぶ無人島です。見た目は島というより巨大な岩礁といった感じです。マグロ以外にもカンパチ、ヒラマサ、シマアジといった大型回遊魚やモロコ、ハタなどの大型根魚が狙えます。「限定近海航路許可」を取得した船舶のみが釣行でき、出港地により差がありますがルアーの平均乗船代金は30000円ほどです。
今回、いち早くイナンバへ出撃したのは遠征船の大御所、土肥とび島丸。舵を握る鈴木船長は釣り人を大物と戦う「勇者」とすべく、日々研究と大胆な挑戦が魅力の船長。船内の独特の雰囲気やマイク演出は自然と釣り人を高揚させ、大物遠征を存分に楽しませてくれます。
遠征釣りを行うだけあって船は遊漁船としては最大クラス。多少海況が悪くても揺れが少なく、第11とび島丸はベッドも完備され釣り場までの往復はゆっくり寝てゆくことが可能。出船時間が早くとも釣り場に着くまでに休むことができます。初めての挑戦でも乗船前から丁寧なレクチャーで安心して挑むことが可能。上乗りさんも乗船し心強いフルサポート体制。きっと記憶に残る釣行となるでしょう。

 

初心者でも大物釣りがしたいと思ったら「土肥とび島丸」です!

電動ジギングの威力

黒潮よせるイナンバへ向け、土肥港を1時半に出港し、釣り場についたのは6時過ぎ。前日が荒天だったためウネリは強く残り3メートル近い波高となっています。
私は普通のジギングタックル。同行のF氏は電動ジギングで参戦。電動ジギングとは「電動リールの巻き上げ+シャクリのコンビネーション」で狙う釣法。ペースを乱すことなくアピールできるため、動体視力に優れ警戒心の強いマグロ類に有効です。

そう、実に有効なのです。一流し目こそ全員空振りとなるものの、先頭に立って掛けまくる電動ジギングのF氏。普段より深めの200メートル以深に反応が出ても余裕で攻めきり、荒れた海も何のその。船内でバラしが多発する中、一切バラすことなく上げてきます。
ルアーアングラーの端くれとしては複雑ですがこの威力は本物・・・。いったい何がおきているのでしょうか?

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電動リールのパワー

船のエサ釣り師は最近の電動リールのハイパワー化はご存じの方も多いでしょう。ルアーアングラーは触れる機会も少ないので分かりにくいかもしれません。
たまに「手巻きと電動どちらが強いの?」と聞かれることがありますが、同じラインキャパの現行ハイエンドモデル同士ならば、電動リールは人間の力を越えています。
ギア比などの条件もありますが、少なくとも電動リールのブレーカーがあがる前に殆どの人間はヘバります。何百台と電動リールやオフショア用リールの糸巻きをしての結論です。それほどのパワーを現在の電動リールは秘めているのです。
また最近はテンションコントロール機能を持つモデルも多く、引きやウネリの強弱によって巻き上げ速度を変動させ、ラインを保護しバラシを防ぎます。そして構造がベイトリールなのでフォール中のバイトに対しての応答性も良好。最近はスピニングリールが多いジギングにおいて大きなアドバンテージとなるでしょう。

エサ用青物ロッドの利点

電動リールを用いてのジギングが電動ジギングとなるわけですが、その際に専用のジギングロッドを用いる必要はありません。メジ・カツオやカモシ釣りなどで使うような、ワンピースロッドであれば十分通用します。

・ラインが切られにくい
マグロは非常に目の良い魚です。特に動体視力に優れ、怪しいと感じたものを瞬時に避ける危機回避能力もなかなかのもの。当然、太ラインを見切る能力も優れ、太いリーダーによって一人だけ釣れないなどということも発生します。
故にイナンバでは20号(60ポンド程度)のフロロリーダーを用いるアングラーが多く、対象魚に対して細めなので一瞬の油断で切られる場面を目にします。
「太ければ食わない、細ければ切られる」よくある話ですが、いかにラインを切られないかが重要です。
この問題で大きなアドバンテージを持つのが餌釣り用の青物ロッド。グラス素材を多く使用したブランクは、カーボン素材ほぼ100パーセントのジギングロッドには出せないクッション性と驚異的な粘りを生み出します。
これによりロッドをしっかり立ててファイトできれば、ドラグで過負荷を逃がしつつ、ラインブレイクの原因となる瞬間的衝撃を避けることができます。

・バラしにくい
メタルジグは200グラム前後の重量。それが口元のフックから下方向へ自重が掛かっています。当然巻き上げる方向と逆なので、ファイトによって針穴が広がったところにウネリによってテンションが抜けてしまうとスッポ抜ける事態が起こります。これで悔しがる人を何人見たことか・・・。
柔軟に曲がるグラス素材を用いたロッドは魚が掛かれば常にテンションを与え続けます。加えて長さもそれなりにあるので、ウネリの上下動によって起こるテンション抜けが少なくバラしを防止します。

 
曲がり方は一目瞭然!ファイトにおいてはエサ用青物ロッドは断然有利です

これらのロッドはジギングロッドにおける分類ではローレスポンスロッドに属します。ローレスポンスロッドは弾性が低く、ブランク戻りがやや遅いのが特徴。ジグを跳ね飛ばすようなアクションは苦手ですが、メリハリあるストップ&ゴーのような動作は得意とします。その動作でも十分に釣れるのですが更に釣るために有効なメタルジグが存在します。

ローレスポンス対応のメタルジグ

イナンバでの流しはマグロの反応を見ながら、イナンバ島へ向けて潮に乗る方法。スパンカーを出した船は風に舳先を向け、船下を流れる潮流は1.5ノットから速いと4ノット近くになることもあります。ここへ200~300グラムのジグをマグロの反応に応じて70~200メートル落とし込みます。
ラインが斜めに入り速潮に流されたジグへ、ロッドの反発力でスライドさせるようなアクションを入力することは極めて困難。船上でしっかり動かしているつもりでも、糸フケによって力の伝達は緩慢になり、ジグは棒引き状態になることも多数。これを防ぐためにハイパワーな高弾性ロッドに300グラム以上のヘビージグを組む選択もありますが、大抵は数流しでバテてしまうことでしょう。
電動ジギングで前記のタックルではジグの棒引き状態は必至です。しかし逆転の発想で棒引きになる緩慢な力をウネるようなアクションに変えるジグが存在します。

・MCワークス)ガタージグ
独特の溝が掘られたボディが最大の特徴。従来のようなロッドで弾いてスライドさせるアクションは苦手ですが、独特の溝が潮流を逃がし、ウネるようなアクションを発生させます。これにより単純なストップ&ゴーの棒引きが、ウネる動作による誘いとフラッシングによるアピール。そして独特の波動を演出し、食わせの間となるストップでたまらず食いつくというわけです。
正直私もその威力は実際に目にするまでは半信半疑でした。しかし、目の前での爆釣劇とジグの適正ロッドの関係から間違いなく通用するものと確信しました。
このジグはジギングでは珍しいローレスポンスロッドの使用を前提としたモデル。反発力の強いハイレスポンスロッドで「弾く」のではなく、反発力の弱いロッドの「戻り」によってウネる動作を生み出しています。
これは餌釣りのロッドが非常に得意とするアクション。常にオモリを下げている餌用ロッドは曲がっている状態が基本であり、餌の不自然な動きを押さえウネリをかわすしなやかなブランクはガタージグとの相性が非常に良いのです。

ヒット連発!これぞパワースポット「イナンバ」

次つぎと掛かるマグロにファイトと取り込みで船内のテンションは最高潮!ジャーク後の間で食ってくるパターンが多いものの、フォールにもバイトは出ており、糸フケに注意し一瞬の変化を見逃さないことが重要。特にスピニングタックルではバイトが見難いのでフェザーリングでジグのフォールを妨げない程度にラインを張ると効果的です。周囲に海鳥は多く、流し変える度に複数ヒット!水深が200メートル以浅のイナンバの根に差し掛かるとヒラマサも登場。しかし根についたヒラマサは大型でパワーも凄まじくラインブレイクも・・・。それでも14キロと19キロが浮上!切っていったヒラマサはもっと大きそうです。 各自様々なアクションを試してますが基本はワンピッチジャーク。マグロ類はフォール中のバイトも多いので少しでも落下速度が緩んだらアワセを入れてみると取りこぼしは少なく済みます。 ファイトに入ったらパワフルな魚の引きを楽しみましょう。大きいようなら膝を曲げて腰を落としどっしり構えるぐらいで。最初から全力ではバテてしまいます。長距離走のようにスタミナ配分を考えた勝負が基本。リラックスして楽しむ心が重要です。 大きいようならポンピングをしますが大きいストロークはNG。体力の負担も大きいですし、負荷抜けによるバラシや魚に反転の隙を与えます。ショートストロークで小さく素早く巻きとって距離を詰めてゆきます。残り20メートルを切ったら周囲に声を掛けておきましょう。 取り込みはギャフマンと息を合わせて。マグロ類は回って上がるのでタイミングを予測して素早く掛けてもらいましょう。だらだらと旋回させ続けてはオマツリの原因になりますし、船下に突っ走られると体勢的にかなり苦しくなります。 無事にギャフが入れば捕獲成功!とび島丸では上乗りさんが保冷用魚倉に運んでくれますので大型クーラーの船内持ち込みは不要。撮影とタグ付けが済んだらお任せしましょう。

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掛かる魚は10キロオーバーばかり!これが遠征釣りの魅力!!

記憶に残る特別な釣行を

興奮度満点の遠征釣りの時間は瞬く間に過ぎ去り沖揚がりの時刻を迎えました。ファイトの達成感に酔いしれる者、無念にもブレイクされ再挑戦を誓う者など人それぞれですが、乗船したアングラーの記憶に強く残る釣行となったことでしょう。結果はキハダマグロ船中1本、ビンチョウ船中24本、ヒラマサ船中2本、ヒット数はその倍以上。その他メダイ・小カンパチ・カマスザワラまじりです。
遠征船は技術も運も資金もタイミングもいる釣りです。しかし乗船した釣り人にはそれ以上の大きな感動を残します。「近場で気軽に」と違う特別な釣行。遠征釣りという「お祭り」に気合いを入れて挑んでみてはいかがでしょう。

土肥 とび島丸
℡0558-99-0159

[使用タックル]
ノーマルジギング:

SGコースタル コンビジャーク64
ソルティガ4500
ウルトラダイニーマWX8 4号300メートル
シーガーFXR船20号5メートル
キラージグⅣ210グラム

電動ジギング:
ゴウインブルHHH240
電動丸BM3000ムテキ
シーガーFXR船20号5メートル
ガタージグⅣ210グラム

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