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闇夜の怪魚バトル

ここ数年、近海で大型回遊魚の釣果が上昇してきたように感じます。伊豆南沖のクロマグロ、相模湾のキハダマグロとブリ、外房の大型ヒラマサ。皆様の記憶にも新しいことと思います。

しかし、これらの大型魚を何の対策もなく仕留めることは至難の業。理論は勉強できても技術は経験から覚えるものです。そんな、大型魚との闘いを気軽に経験できる釣りがあります。

闇夜の深海巨魚

ターゲットとなるのはバラムツやアブラソコムツ。日中は水深400~1000mの深海に生息する深海魚ですが、浮き袋を持たない彼らは夜間にサバやイカなどのエサを求めて100m以浅まで現れます。そのサイズは大きく、全長2m近くまで成長し、重量は50kg近くに達します。そして特にアブラソコムツのシルエットはマグロに酷似しているためか、高い遊泳力を誇ります。
バラムツやアブラソコムツは温暖な海域であれば世界中に分布しているといわれますが、やはりエサの多い所ほど生息数は多いようです。関東周辺では東京湾、相模湾、駿河湾のいずれにも生息し、その中でも複雑な海底地形と深い水深の駿河湾は格好の住処となっています。
釣りとしてはローカルな対象魚であり、深海釣りでは周年掛かる邪魔物扱い。そのためいつでも釣れるように思われがちですがシーズンは5~12月。前半はアブラソコムツ、後半はバラムツが多めです。水温の上昇する夏期は入れ食いの数釣りが楽しめ、年末ごろには日本記録が狙える超大型が掛かってきます。
また釣行予定を立てるのなら月齢も気にしたいところです。夜間に浅海へ浮上し補食活動をする魚ですが、月明かりによって泳層が変化します。これはエサの遊泳層が変化するためで、明るい時ほど浅く、暗いときほど深くなる傾向が見られます。

タックルの強度を試す

大型魚だけに釣ることを最優先するならばタックルは頑丈なものを選べばよいのですが、より楽しむため、そしてマグロやヒラマサとの大物バトルを想定した練習とした場合、普段、青物狙いで使っているタックルをそのままお使うことをおすすめします。

そうすればタックル強度、ドラグ強弱の感覚、ファイトのスタミナ配分、魚のコントロールなど大型魚を仕留める上で重要な技術を体感することができるでしょう。
タックルに求める最低限の条件は「道糸:PEライン250m以上」。中には技術向上のためにシーバスジギングタックルで挑む強者も!いずれ夢の大型魚と対峙できるようタックルやノットなど様ざまな強度テストを行いましょう。

エサ付きメタルジグで狙う

深場釣りでは胴付仕掛けに掛かるバラムツやアブラソコムツですが、専門に狙う駿河湾ではエサとルアーが融合したスタイル。
300gのメタルジグのリアに大型フックを繋ぎ、そこへ切り身エサを装着します。エサはサンマやサバなどを薄く大きめにカットし、水中でヒラヒラとアピールするように付けると良いでしょう。もし手に入るようならばカツオのハラモがエサ持ち、食い共に良好で特エサとなります。
夜間に狙うだけあって「光」と「臭い」が重要な要素となり、メタルジグは夜光タイプ、切り身エサも旨味調味料などで臭いと味を強化すればアタリが増えます。
また水中ライトも有効なアイテム。最近はLEDの軽量タイプが多く発売されており、装着すれば確実にアタリは増えます。船長は「赤」がおすすめ、私の経験では「白」も有効です。発光パターンは止めて狙うなら「遅い点滅」、動かして狙うなら「速い点滅」が有効と感じられます。

夜の大物を求めて

お世話になったのは清水のD丸。ルアー系の釣りを得意とする船宿でカツオやシイラのキャスティングから、ハタ類やブリ系のジギングで人気があります。特に流行のスロージギングは得意のようです。もちろんバラムツ・アブラソコムツも実績が高く、回遊コースを的確に予測し釣らせてくれます。今回は日没が遅いこともあり18時30分の出船。急深の駿河湾は20分ほどで700m近い水深のポイントに到着します。
「やってみて。まだ明るいから150~200mぐらいをバラバラに探って」とのアナウンスに各人160、180、200mとやや深めの230mで振り分けてスタートしました。潮流はやや速めでラインは緩やかに斜めへ入っていきます。
タナについてからの釣り方は比較的簡単。バラムツやアブラソコムツは静止もしくは速い動作に反応がよく、動かさないか速く動かすか、または組み合わせてアピールしていきます。低速巻き上げなどの中途半端な誘いは反応が悪いようです。
アタリの出方は2パターン。静止状態ではコツコツとヒラメのような魚信、速巻き状態ではガツンと力強い魚信がやってきます。
タナを探り始めて約20分。まだ僅かに明るいのが良くないのか、コツコツと前アタリは出ても単発で消えてしまいます。微妙な停滞感が漂う船内。しかし、その状況を打ち破る、強いアタリが到来しました!
この魚の合わせは強烈に決めることが重要。大型魚の口を太軸大針で貫くべく

「全力で三回叩き込めっ!!!」

とマイクで船長から檄が飛びます。これでガッチリ掛かれば大物とのファイトが始まります。巻き上げで重要なのは「一定のテンションを保つ」こと。ポンピングでの引き上げが基本で、リールを巻くときもロッドのテンションをフリーにせず、常に魚へプレッシャーをかけて反転する隙を与えないことが重要です。

最後の抵抗は強烈

掛かってすぐは激しく抵抗するも、意外と素直に表層まで上がってきました。しかし、この魚の本気はここからです。水中での点滅光には寄ってきますが、光源が大きく常時点灯している船の明かりは好きではないようで、船下に来てからが抵抗が最も激しくなります。中には海面をテールウォークに近い逃げ方をする個体もいるほどです。
このときも残り15mのところでラインが横に走り出しました。本当の勝負が始まります!明らかに速度の増した突っ込み、急な方向転換で釣り人を翻弄。船に寄せてからも急に船下を通過して逆舷に走ったりと抵抗を見せます。
何とか押さえ込んで引き上げた個体は15kg程のレギュラーサイズ。そしてこの1尾を皮切りに活性が一気に高まりました。

ベイトについて高活性に!

闇夜にポツリと浮かぶ船の光源に寄せられ、水深40~60mにベイト反応が多く映り始めました。暗い海の中でエサとなる魚が密集しているのをバラムツやアブラソコムツが逃すはずがありません。闇の中から突然襲いかかり闇に消えてゆくのが彼らの捕食スタイル。船から漏れる光の中を下りるジグは格好のターゲットになります。
スルスルと出ていくラインが急に止まればフォールでのバイトです。すかさず糸フケを巻き取り、ガツンと合わせましょう。この手のバイトが増えるとジグを飲まれるリスクが高まります。意外と鋭い歯を持つので、飲まれてパワーファイとなるとラインブレイクされかねません。
ベイトの層では掛かるサイズは15kgまでがほとんど。中、小型ほど浮く傾向にあり、パターンに入った人は面白いように掛けていきます。しかし、この魚を狙うのなら数よりもサイズ。ベイトの層の下で悠然と泳ぐ大型を掛けてこそ、真のファイトが楽しめます。

大型はさらに下へ潜む

ベイトの層より30m程下の水深100m。アタリは確実に減りますが、狙うは大型です。通常よりも多めにエサ付けしたメタルジグでタナを探っていると「コツ、コツ」と小さいシグナルがやってきました。アタリは小さいほど大型であることが多く、外道でもない限り大型でしょう。慎重に食い込ませ、アタリが増幅されたタイミングで渾身の合わせ!するとロッドにテンションが強く加わり、一気にラインが20m近く引き出されました。しっかり掛かったようです。
良型であればタックル強度とファイト方法の両方が試せます。 今回は70kgまでのマグロを見据えたタックル。大きく曲げてロッドのカーブを見ながら、体感的に限界値を探ることができます。
そして魚の顔を向けたら速攻の練習。ライン限界のハイプレッシャーで抵抗の隙を与えず一気に巻き上げを試みます。これは荒根のヒラマサや、マグロでサメがいるときに使う技術です。取り込み時間とドラグテンションに自身の体力がどれだけ耐つのか、限界を計っておけば本命魚との勝負の際に仕掛けるタイミングを見誤ることも減ります。
このように様ざまな練習ができるのが、この釣りの魅力。速攻を150mからしかけ、5分弱で船下までリフト。しかし最後の抵抗前に体力が尽きたため、ここから10分以上グダグダのファイトに・・・。それでも当日最大の30kg弱をゲット。体力配分の重要性を改めて感じさせてくれた1尾でした。

手軽に挑める大物の魅力

体力が尽きたので一休み。その間にも目の前で次つぎとロッドが絞り込まれ、続ぞくとアブラソコムツが浮上してきます。「今日はサットウ(アブラソコムツ)ばかりだな~♪」と入れ食い状態に船長も上機嫌。このまま終了の22時半まで食い続きました。
今回はバラムツこそ出なかったものの、アブラソコムツは高活性。こんなファイトが夕方から出船して夕涼みがてら楽しめるのです。釣り場が近い清水なら、料金も夜アナゴや夜メバルとさほど変わらない7500円(4名~)で乗船可能です。
気軽な大物ファイトを楽しむもよし、大型魚に備えて技術の練習をするもよし。

本気で魚と「闘える」釣りにチャレンジしてみてはいかがでしょう?

[タックル]
ロッド:ソルティガドラドCB77S
リール:ソルティガ5000
ライン:PE5号300m+100LB3m
ルアー:メタルジグ300g+管付ムロ40

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