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オニカサゴ飼育より見えた実釣のヒント

数年前にオニカサゴを飼育していたことがあります。約半年ほどの期間ではありましたが、釣りに使えるヒントを十分に得ることができました。水槽で見せたオニカサゴの素顔とは?

注意:少数個体の飼育記録ですので参考程度にしていただければ幸いです

沖ノ瀬で捕獲した28センチの個体

きっかけは家族からの「オニカサゴの活け造りが食べたい」との要望。これを受けて三崎えいあん丸に釣行し捕獲するもののインフルエンザでダウン・・・。これにより一時保管の為に入れた水槽より飼育は始まりました。

基本的に無警戒?

当初は飼育する気はなかったので海水魚水槽に水合わせも無しに入れてみたところ、他魚の食べ残したモエビを見つけ一気に吸い込み食べたのです。水槽に移してから僅か2分ほどでの捕食。
数時間前までは沖ノ瀬140メートルにいて、クーラーに入って車で輸送され、水合わせも無しに水深40センチ水温18℃に入れられる。通常これだけのストレスを与えれば相当弱る上に、しばらくは絶食状態になるものです。
エサも多いとは言えない深い海底にいると、目の前を通り過ぎるエサに何でも食いつく習性を持つのは理解できます。しかし、これだけの変化の中ですぐさま捕食行動を起こしたのには本当に驚かされました。

毎分1回転

すぐさまエサを食べたことにより予定外の飼育はスタートしました。メインに生きモエビを与えながら様子を見ていると、特徴的な捕食を見てとれます。
オニカサゴは視覚でモエビを捕らえると、まずはその向きに回頭します。胸ビレと腹ビレを起用に使いながらまるで歩くように。ゆっくりとした動きは毎分1回転ほど。これで向きを整えると捕食体制に入ります。

ロケットスタート

モエビを射程に収めると僅かに身体を縮めるような動きを見せます。まるで猫が獲物に飛びかかる際の動作のようです。すると猛烈なダッシュと共にモエビに近づき、大きな口で一瞬に吸い込みます。ダッシュから捕食までは1秒も掛かりません。吸い込み動作がブレーキにもなるようで獲物の位置より奥に進むこともなくストップしました。これならば障害物に衝突し無駄に傷つくこともないでしょう。
また大型のモエビを投入すると同様に襲い掛かりますが、一口で収まりきらないと数秒間咥えてから首を振るように口内に押し込んでいました。

流れの方向へ

エサを与えながらも他にも色々と実験を継続。ポンプを使用し水槽内に意図的な水流を設置します。
するとオニカサゴはしばらくするとその方向に向きます。何度か設置場所を移動しても10分前後でその向きに向くようです。
普段はエサとなるものが潮上から流れてきたり、潮上に向かって泳いでいる為なのでしょう。
流れている間は自分の後方へエサが流されていっても、エサを追う素振りは見せませんでした。

エサの好き嫌い

与えるエサもモエビや小魚などの生きているものから、サバやイカの切り身など。様々な種類を用意。
エサに関してはまず動くものでなければ興味を示しませんでした。切り身エサは落下途中や紐で動かせば食いつきますが沈むと完全に無視されます。
またエサのサイズは長さよりも太さを意識しているようで、細くても長いものは食いますが太いものは狙いはするもののほとんど襲いませんでした。
自然界で悠長にエサを判断する時間などないはずですから、瞬間的に襲えるか判断する太さがあるのでしょう。

実釣へのヒント

こうして観察しながら実釣でのアタリが増えるヒントを探る期間は半年に及びました。
潮流の有無によるアタリの増減については、流れている場合は各個体が同一方向を向くことでエサを発見できる確率が高まるのでしょう。オニカサゴがエサを意識できるタナで少々停止して焦らし、その後に落とすと食いやすいようです。
逆に潮が流れていなければ各個体はバラバラの方向を向いていると考えれれます。バラバラに向いた個体はエサに気づいても、向きを直してから襲うまでの間を与えなければなりません。大きく動かすよりも目の前で僅かに動かす程度で十分なのでしょう。
またエサのサイズでは太さを調整することで、ある程度なら狙うサイズを絞ることもできそうです。

半年間の成長

約半年間飼育したオニカサゴでしたが最後は水温クーラーの故障によって亡くなりました。飼育水温は18℃で死亡時の温度は27℃。海底での生息温度はかなり低いはずですから3℃前後でも恐らく耐えるでしょう。輸送における目安温度として氷ペットボトルは入れておいたほうがよいようです。
様ざまなエサをあたえ、飼育水温も生息域よりかなり高い状態だったでしょう。参考値ですが飼育開始より約2センチ成長していました。「大鬼」と呼ばれるサイズまで成長するには長い年月を要するのは間違いなさそうです。小型は放流し、大切に釣り続けてゆきたいと改めて感じさせられました。

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