Archive for 6月, 2011

4/24 ガイドのモンダイ?

6月 15 2011 Published by under 本誌記事

●協力/ティカジャパン株式会社なのに…

シロギス竿(下)とライ ト五目用(上)を1本に まとめてしまおう!

「沖藤さんが持っているなかで『つれる竿』にあたる竿ってあるのですか?」

「よくぞ聞いてくれました吉田さん。ジャーン、この竿で湾奧の小物を全部釣りました!」

取り出したのは『極鋭MCGAME180』。ベイト、スピニング両方に対応できる竿だ。

「それぞれの魚種での評価は別として、湾奧のオモリ40号以内の釣りは全部できるスゴイ竿です! ちょっと高価なのが玉にきずだけど」

「……(沈黙)D社さんですね……しかもメタルトップじゃないっすか(沈黙)」

ここはティカジャパン本社。

「なるほど、分かりました。ウチは替え穂でバッチリと、滑らかな、美しい調子の竿をつくってみせましょう」

つり情報を見るや奥さんに、「老け顔」と言われてしまった吉田さんのメガネの奥の眼に、プロとしてのプライドの炎がチロチロと燃えていた。

そして前回、既製品からイメージに近い物を選び出し、替え穂候補を3種類試作することが決定。同じ調子の穂先でも、先径が0.8、0・75、0.7ミリと、わずか0・05ミリ違うだけでフィーリングがガラリと変わることに驚いたのであった。

「同じオモリ30号をぶら下げても、わずか0・05ミリ先径が変わるだけでこんなに違うのです」

吉田さんに竿づくりの奥深さを教わりつつ、穂先選びは決定した。

今回は設計図を前に、仕様について話を進める。

「おお、すごい! 設計図ってやっぱりカッコいいなあ」

「設計してみたら、バットを15センチ伸縮させることが大変難しいことが分かりました」

詳細は省くが、当初はバット部を15センチから30センチにスライド可能とする予定だったが、設計上20センチから30センチへのスライド幅が限界だったそうだ。

「それでもスライド幅10センチというのはティカでも初です」

現在、主要メーカーから出されているシロギス専用竿はグリップが20センチ以下。一方、ライトアジやマルイカに使われる竿は30センチほど。この2本を1本でこなす。

「まさに『つれる竿』専用設計のグリップですね!」

「違う竿をくっつけちゃうようなもので、大変なことです」

ガイド数は竿のカーブと糸当たりを計算して12個。

「ところで吉田さん、ガイドの種類ってどうやって選ぶの?」

「……実はですね、これこそコスト、つまり販売価格によってなんです」

明らかに聞いてほしくないことを聞かれた! という表情の吉田さん。

「リングはオールSiC?」

「……それじゃあ販売価格1万円以内は無理ですよぉ」リングとはガイドの内側の丸い輪のこと。道糸が直接当たる場所で、SiCリングが高級とされる。その単価を紙に書く吉田さん。それによるとSiCリングをふんだんに使うと、予算の大半を食うことが判明。

「じゃあ、フレームもチタンは無理?」

「ありえませんって! オールチタンフレーム、オールSiCリングのコストだけで予定販売価格をオーバーしちゃいますって!」

軽自動車にジャガーのホイールを履かせるようなものか。

「たとえが分かりづらいですよ」

と、言うわけで『つれる竿』のガイドは実用優先へ。

「ここは見せられません」と言いつつ何でも 教えてくれる吉田さん

「オールステンレスフレームで、トップと元のみSiCリングというのはどうでしょう。それ以外は機能面で不足のないハードリングです」

販売価格からすれば、それでもギリギリとか。

「ところで、以前、竿先に負荷がかかったときはトップガイドよりも2番目、3番目のガイドのほうが道糸が強く当たるって話、してましたよね? なら『つれる竿』はトップをハードリングにして、2番目にSiCリングっていうのも実用的じゃないですか?」

「ううっ」

メガネを直しつつ、人なつこい笑顔で答える吉田さん。

「そこはまあ、やはり、トップにSiCリングのほうがイメージがいいってことで……」

次号、ついに試作品が!色はどうする? デザインは!?

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3/24 既製品からイメージを具体化していく。

6月 01 2011 Published by under 本誌記事

●協力/かなりティカジャパン株式会社

ティカジャパンを急襲、 じゃなくて、ちゃんとア ポを取って訪れました

「吉田さん、たくさん竿があるんですね。驚いたなあ!」

「沖藤さんの会社に本がいっぱいあるのと同じです」

「おれはこっちのほうがいいなあ! 竿とリールがたくさん」

日本橋人形町のオフィスビルにあるティカジャパン本社。

「既製品から近い物を選んでいただくことで、設計がだいぶ具体的になってきます」

吉田さんが机の上に並べた竿は十数本。
ここで今一度「つれる竿」の基本構造を再確認。

●ライトアジを中心としたグループ(オモリ25〜40号)と、シロギスを中心としたグループ(オモリ5〜20号)に1本で適応させるため、替え穂を採用、長さはスライドバットシステムを使って調節可能にする。

つまり穂先は2種作るのだが、胴=ブランクは1本。まずはそれを選ぶ。

ライトアジやライトマルイカに使うことを想定して40号オモリをぶら下げていく。軟らかいものは40号オモリでかなり曲がり込み、硬いものはわずかに曲がる程度。その中から2本の竿を選び出した。

●候補1=軽くてビンビン。カーボン98パーセントの高感度仕様のライトゲームロッド。

このブランクで作ったら面白そうだと思うのだが、ちょっと張りが強すぎるか。

「この竿は24トンのカーボンを素材に使っています。同じカーボンを元に、粘りを持たせたブランクもあります」

吉田さんが示したのが、

●候補2=カーボン75 パーセントにグラスをミックスしたブランクのライトゲームロッド。製品名は「WINDS船73ライト170HS」。カタログによればオモリ負荷表示30〜60号の7:3調子だ。

候補1の軽快さも魅力だが、こちらのほうが手になじみやすい。言うなれば、候補1はスポーツカーで、候補2は乗用車。

「ところで吉田さん、24トンとかって、どういうことなの?」

「カーボン素材の種類と思っていただいて差し支えありません。では、次は穂先を決めましょう」

私に詳しく説明すると長いと判断したか、とっとと次の作業に取りかかる吉田さん。

「こちらもオモリをぶら下げてフィーリングを確かめましょう」

まずはオモリ25〜40号、ライトアジやライトマルイカを想定したグループの穂先。

「最初は先径0.9ミリのカーボンソリッド……」

「おおおっ! これはビンビン手に伝わってきますね。この穂先、いいなあ!」

「ちょっと待ってください。『つれる竿』って、初心者でも安心して楽しめることが大前提ですよね? だとしたら、カーボンで細めの穂先は折れるリスクが高くなります」

「なるほど……」

「次は、先径0.9ミリ、グラスソリッドの穂先です」

「おお、こちらはそれほどビンビン伝わってこないけど、グラスソリッドだけに竿先がよく動いてくれますね。これで扱いやすいとなれば、初心者にピッタリだ」

というわけで、オモリ30〜40号用の穂先は、先径0.9ミリのグラス穂先が第一候補。これは一般的な沖釣り用の竿としてはいほうだ。

続いてはオモリ5〜20号の小物用の穂先。候補の竿に10号オモリをぶら下げていく。

「これは先径0.7ミリのグラスです。かなり繊細な反面、初心者が使うことを考えるとリスクが高すぎると思いませんか?」

削れと言われればもっと細くできます、と胸を張ると同時に、メーカーだからこそ分かるトラブルの前例から、吉田さんがすすめるのは先径0.8ミリ。

「う〜ん。確かにオモリ25〜40号用が先径0.9ミリなら、0.8ミリでいいのかもしれないけど、0.7ミリが捨てきれないなあ……」

同じ素材でも先径がわずか0.1ミリ違うだけで竿先の フィーリングは大きく変わる

湾フグやイイダコや落ちハゼを想定すると、10号オモリをぶら下げて「使いたい」と思わせる穂先はやはり先径0.7ミリ。

「ちょっとぐらいこだわったほうが『つれる竿』っぽくない?」

「分かりました。では、小物用の穂先は、先径0.7、0・75、0.8ミリと、3つのサンプルを作ってみましょう」

「え!?そこまでやってもらえるんですか。それにしても、竿づくりって、大変ですねえ」

「いえ、ここまでは簡単なんですよ、実は」

次号、吉田さんの不気味な予言が現実に…たぶん、まだならない。

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