6/24 ネーミング&カラーリング決定!

●協力/そこがティカジャパン株式会社

シミュレーション画像。 オヤジの発想の粋を超 えるカラーリングが進行中

名前と色を女性釣り師から公募して決めるという、たぶん量産の釣り竿では初の試みを実施した「つれる竿」プロジェクト。いよいよ名前を決める。

「応募の中からこれだ! と決めるのもいいかと思ったのですが、それではボクたちが決めたことになりませんか?」

昼下がりの外神田・つり情報編集部。真剣な顔でティカジャパンの吉田俊介さんは切り出す。

「どの応募も『つれる竿』のことをよく考えていただいてますから、22通の色と名前の案で十分に傾向を見ることができます」

吉田さんは3つの円を描いた紙を示して説明する。

「まず、外国語の名前が16通、造語が4通、日本語が2通です。こうして円を三つ描いてみると、重なるところ、つまりストライクゾーンは外国語をメインとして造語をミックスさせた名前、ということになります」

理路整然と話す吉田さん。さすが水産大(現・海洋大)出身。なんだかマーケティングっぽい話になってきた。

「外国語と造語ですか……いくつもあるけど、どれかなあ。おれは『アタック・ナンバー湾』が好きだけど」

「沖藤さんが勝手に選んじゃいけません。まずは女性たちが応募してくれた名前の中から重複するものを選び出し、検討していくべきです」

ピシャリと締める吉田さん。

「で、複数応募のあったのがMAGICAL=マジカル』を使った名前です」

「なるほど『マジカルスティック』に『マジカルマジョルカ』ですね」

「そうです。で、造語については書き方こそ異なるのですが、1本の竿で欲ばりに釣るというコンセプトを反映して『ワン』『湾』『ONE』を加えた名前が多いのです」

「おお、なるほど!」

「そして最も参考になったのが、女性は名前に星(★)を入れるのが好きということです。実に5人の女性が入れています」

「ホントだ、こりゃすごい!」

「で、ですよ。これを組み合わせると『MAGICAL★ONE』となるのです!」

吉田さん。どや顔。

『MAGICAL★ONE』

MAGICAL=マジカルは2種類の穂先と伸縮するグリップで色んな釣りに対応してしまう「魔法のような」または「不思議な」竿を現し……

ONE=ワンは1本で釣るという意味のほか、湾奧のワン、アルファベットで「おねえさん」のONE(オネ)にも通じる。

「おおっ、お姉さんと、お願いにかけて『オネ★ツレ』という名前もありました。これ、編集部では人気あったんだよなあ」

「それら多くのエッセンスを集めたのが『MAGICAL★ONE』ということになります」

う〜む、すごい。男性陣=オヤジ=の好みを一切入れず、女性が考えた名前の集合体だ。

抽選の結果『Merry ★ Fish』で応募していただい た方に完成品をプレゼントいたします。来春までし ばしお待ちください!※応募いただいた皆さま、誠にありがとうございま した。

「ところで吉田さん、名前を採用された方には完成品をプレゼントする予定ですが、正確には名前をそのまま採用された方はいません。ですが、9つの案からから名前の一部を使わせていただきました。どうしますか?」

「そうですね……」

「9本出しちゃいますか? バーッと」

「いや! それはちょっと……」

「では9等分しますか?」

「そんな無茶な!」

釈明会見状態に陥る吉田さん。

「では、名前の一部を採用させていただいた9名の方をクジ引きいたします。応募いただいた皆さま、ご了承ください」

「さて、色はどうします?」

「それこそ圧倒的多数でピンク、ピンクの中でもメタリック、ラメですよ」

「……ですよね」

歯切れの悪い吉田さん。

「以前、ピンクの竿が売れなかったことがあったんですか?」

「い、いや、そうとは言い切れないのですが……」

「だめですよ吉田さん。名前と同じく、物理的、予算的に可能なら、色も女性の意見を最優先しなくちゃ」

「そうですね」

「では、メタリックピンクをメインに、紫を組み合わせ、パール、ブルー、黄、オレンジをあしらった竿を試作しましょう」

「ピンクと紫って、ホントですか?」

「ホントです」

次号、そろそろ実釣の話を書く!かもしれない。

5/24 プロト1号と名前と色のモンダイ

●協力/まだまだティカジャパン株式会社

ついに上がってきたプ ロト1号、3種類試作 するはずの穂先がなぜ か4本 !?

「これが試作品です」

「おお! できましたか!」

昼下がりの外神田、つり情報編集部。いよいよ『つれる竿』の試作品=プロトタイプ第1号が上がってきた。

「でですね、ちょっとモンダイがありまして……」

あいまいな笑顔を見せつつプロトタイプを取り出すティカジャパンの吉田俊介さん。

「実は、穂先が先径0.9、0.8、0・75、0.7と、1種類多く作ってしまったのですが……」

「おお、多いぶんにはいいじゃないですか!」

さっそく真っ黒いプロト1号を出して穂先を確認、余分に作ってしまったという先径0.9ミリの穂先を継いでみる。

「いいですね、太くて安心感があって、よく動く!」

「予想外だったのですが、いいですよね? ライトマルイカにも使えるでしょ?」

続いて先径0.8ミリの穂先。

「こちらは当初から予定していただけあって、想像どおり、いい感じですね」

「そうでしょう!」

何よりもグリップを伸ばすとバットが30センチもあるからしっかり脇挟みができるのがうれしい。他の編集部員も脇挟みしては「へえ〜」などと感心しつつ通り過ぎて行く。

「まずは八景あたりのライトアジで、先径0.9ミリ、0.8ミリの穂先を比較しつつ、全体の調子やグリップをチェックしていく感じですね」

「沖藤さん、女性もテストしてくれるんですよね?」

「もちろんですよ。編集部員に女性がいないからって、心配しないでください」

うたぐり深い吉田さんに今一度、釣りガール(独身・推定20代後半)から届いた試釣の日程メールを見せる。

「で、吉田さん、この細い2本がシロギスモードの先径0・75ミリと0.7ミリですね?」

「あ、あ、それがですね、実はライトアジモードと同じ硬さで上がってきちゃったんです」

汗をふきながら慌てて説明する吉田さん。たしかに、穂先を継ぐとまるで9:1の極先調子のようにピンピンしている。

「うわ! これ、硬さが同じままで細くなっているから、衝撃的な竿になってますよ。たとえるなら、極細すぎるカワハギ竿」

「設計ではもっとクニュッとしなやかに曲がるんです。設計どおりにいかなくて、今、作り直させていますからっ」

吉田さん、釈明会見状態。

「これ、書かれちゃうんですか」

「はい。プロトで失敗したり、試釣で折れたりするのも開発の苦労やコストですものね」

「ま、まあそうですけど……」

「ところで沖藤さん、竿の色と名前、そろそろ決めないといけないんですよ」

「ええ!?来春発売なんだから、冬ぐらいじゃないんですか?」

「何言ってるんですか。竿の名前を入れたり、塗装するために6月中旬には色と名前が決まっていないといけないんです」

聞けば竿やロゴデザインのほか箱を使う場合は箱のデザインや発注も夏前には終わらせなくてはいけないらしい。

「色は悩むけど名前は『つれる竿』でいいんじゃない?」

「……ネーミングは女性に意見を聞きましょうよ」

先ほどの釈明会見とは一転、攻めに転じる吉田さん。

「じゃあ、色はおれが考えましょうか?」

さっそく公募メッセージを発信。その 反響に感動

「だめです! それこそ女性たちの意見を参考に作りましょう」

釣りガールのために役立つ竿を作りたい。そのコンセプトだけは譲らない吉田さん。さすが職人である。

「分かりました。では、時間がないのでツイッターとミクシィとフェイスブックで公募してみましょうか!」

「いいですね! ネーミングが採用された方には完成品を贈呈いたします!」

6月15日を締め切りの目安に【拡散希望】で『つれる竿』の色と名前公募メールを回す。すると、女性釣り師が次つぎと協力を名乗り出てくれる。その反響には驚くばかりである。

次号、いよいよネーミングとカラーが決まる、はず。

4/24 ガイドのモンダイ?

●協力/ティカジャパン株式会社なのに…

シロギス竿(下)とライ ト五目用(上)を1本に まとめてしまおう!

「沖藤さんが持っているなかで『つれる竿』にあたる竿ってあるのですか?」

「よくぞ聞いてくれました吉田さん。ジャーン、この竿で湾奧の小物を全部釣りました!」

取り出したのは『極鋭MCGAME180』。ベイト、スピニング両方に対応できる竿だ。

「それぞれの魚種での評価は別として、湾奧のオモリ40号以内の釣りは全部できるスゴイ竿です! ちょっと高価なのが玉にきずだけど」

「……(沈黙)D社さんですね……しかもメタルトップじゃないっすか(沈黙)」

ここはティカジャパン本社。

「なるほど、分かりました。ウチは替え穂でバッチリと、滑らかな、美しい調子の竿をつくってみせましょう」

つり情報を見るや奥さんに、「老け顔」と言われてしまった吉田さんのメガネの奥の眼に、プロとしてのプライドの炎がチロチロと燃えていた。

そして前回、既製品からイメージに近い物を選び出し、替え穂候補を3種類試作することが決定。同じ調子の穂先でも、先径が0.8、0・75、0.7ミリと、わずか0・05ミリ違うだけでフィーリングがガラリと変わることに驚いたのであった。

「同じオモリ30号をぶら下げても、わずか0・05ミリ先径が変わるだけでこんなに違うのです」

吉田さんに竿づくりの奥深さを教わりつつ、穂先選びは決定した。

今回は設計図を前に、仕様について話を進める。

「おお、すごい! 設計図ってやっぱりカッコいいなあ」

「設計してみたら、バットを15センチ伸縮させることが大変難しいことが分かりました」

詳細は省くが、当初はバット部を15センチから30センチにスライド可能とする予定だったが、設計上20センチから30センチへのスライド幅が限界だったそうだ。

「それでもスライド幅10センチというのはティカでも初です」

現在、主要メーカーから出されているシロギス専用竿はグリップが20センチ以下。一方、ライトアジやマルイカに使われる竿は30センチほど。この2本を1本でこなす。

「まさに『つれる竿』専用設計のグリップですね!」

「違う竿をくっつけちゃうようなもので、大変なことです」

ガイド数は竿のカーブと糸当たりを計算して12個。

「ところで吉田さん、ガイドの種類ってどうやって選ぶの?」

「……実はですね、これこそコスト、つまり販売価格によってなんです」

明らかに聞いてほしくないことを聞かれた! という表情の吉田さん。

「リングはオールSiC?」

「……それじゃあ販売価格1万円以内は無理ですよぉ」リングとはガイドの内側の丸い輪のこと。道糸が直接当たる場所で、SiCリングが高級とされる。その単価を紙に書く吉田さん。それによるとSiCリングをふんだんに使うと、予算の大半を食うことが判明。

「じゃあ、フレームもチタンは無理?」

「ありえませんって! オールチタンフレーム、オールSiCリングのコストだけで予定販売価格をオーバーしちゃいますって!」

軽自動車にジャガーのホイールを履かせるようなものか。

「たとえが分かりづらいですよ」

と、言うわけで『つれる竿』のガイドは実用優先へ。

「ここは見せられません」と言いつつ何でも 教えてくれる吉田さん

「オールステンレスフレームで、トップと元のみSiCリングというのはどうでしょう。それ以外は機能面で不足のないハードリングです」

販売価格からすれば、それでもギリギリとか。

「ところで、以前、竿先に負荷がかかったときはトップガイドよりも2番目、3番目のガイドのほうが道糸が強く当たるって話、してましたよね? なら『つれる竿』はトップをハードリングにして、2番目にSiCリングっていうのも実用的じゃないですか?」

「ううっ」

メガネを直しつつ、人なつこい笑顔で答える吉田さん。

「そこはまあ、やはり、トップにSiCリングのほうがイメージがいいってことで……」

次号、ついに試作品が!色はどうする? デザインは!?

3/24 既製品からイメージを具体化していく。

●協力/かなりティカジャパン株式会社

ティカジャパンを急襲、 じゃなくて、ちゃんとア ポを取って訪れました

「吉田さん、たくさん竿があるんですね。驚いたなあ!」

「沖藤さんの会社に本がいっぱいあるのと同じです」

「おれはこっちのほうがいいなあ! 竿とリールがたくさん」

日本橋人形町のオフィスビルにあるティカジャパン本社。

「既製品から近い物を選んでいただくことで、設計がだいぶ具体的になってきます」

吉田さんが机の上に並べた竿は十数本。
ここで今一度「つれる竿」の基本構造を再確認。

●ライトアジを中心としたグループ(オモリ25〜40号)と、シロギスを中心としたグループ(オモリ5〜20号)に1本で適応させるため、替え穂を採用、長さはスライドバットシステムを使って調節可能にする。

つまり穂先は2種作るのだが、胴=ブランクは1本。まずはそれを選ぶ。

ライトアジやライトマルイカに使うことを想定して40号オモリをぶら下げていく。軟らかいものは40号オモリでかなり曲がり込み、硬いものはわずかに曲がる程度。その中から2本の竿を選び出した。

●候補1=軽くてビンビン。カーボン98パーセントの高感度仕様のライトゲームロッド。

このブランクで作ったら面白そうだと思うのだが、ちょっと張りが強すぎるか。

「この竿は24トンのカーボンを素材に使っています。同じカーボンを元に、粘りを持たせたブランクもあります」

吉田さんが示したのが、

●候補2=カーボン75 パーセントにグラスをミックスしたブランクのライトゲームロッド。製品名は「WINDS船73ライト170HS」。カタログによればオモリ負荷表示30〜60号の7:3調子だ。

候補1の軽快さも魅力だが、こちらのほうが手になじみやすい。言うなれば、候補1はスポーツカーで、候補2は乗用車。

「ところで吉田さん、24トンとかって、どういうことなの?」

「カーボン素材の種類と思っていただいて差し支えありません。では、次は穂先を決めましょう」

私に詳しく説明すると長いと判断したか、とっとと次の作業に取りかかる吉田さん。

「こちらもオモリをぶら下げてフィーリングを確かめましょう」

まずはオモリ25〜40号、ライトアジやライトマルイカを想定したグループの穂先。

「最初は先径0.9ミリのカーボンソリッド……」

「おおおっ! これはビンビン手に伝わってきますね。この穂先、いいなあ!」

「ちょっと待ってください。『つれる竿』って、初心者でも安心して楽しめることが大前提ですよね? だとしたら、カーボンで細めの穂先は折れるリスクが高くなります」

「なるほど……」

「次は、先径0.9ミリ、グラスソリッドの穂先です」

「おお、こちらはそれほどビンビン伝わってこないけど、グラスソリッドだけに竿先がよく動いてくれますね。これで扱いやすいとなれば、初心者にピッタリだ」

というわけで、オモリ30〜40号用の穂先は、先径0.9ミリのグラス穂先が第一候補。これは一般的な沖釣り用の竿としてはいほうだ。

続いてはオモリ5〜20号の小物用の穂先。候補の竿に10号オモリをぶら下げていく。

「これは先径0.7ミリのグラスです。かなり繊細な反面、初心者が使うことを考えるとリスクが高すぎると思いませんか?」

削れと言われればもっと細くできます、と胸を張ると同時に、メーカーだからこそ分かるトラブルの前例から、吉田さんがすすめるのは先径0.8ミリ。

「う〜ん。確かにオモリ25〜40号用が先径0.9ミリなら、0.8ミリでいいのかもしれないけど、0.7ミリが捨てきれないなあ……」

同じ素材でも先径がわずか0.1ミリ違うだけで竿先の フィーリングは大きく変わる

湾フグやイイダコや落ちハゼを想定すると、10号オモリをぶら下げて「使いたい」と思わせる穂先はやはり先径0.7ミリ。

「ちょっとぐらいこだわったほうが『つれる竿』っぽくない?」

「分かりました。では、小物用の穂先は、先径0.7、0・75、0.8ミリと、3つのサンプルを作ってみましょう」

「え!?そこまでやってもらえるんですか。それにしても、竿づくりって、大変ですねえ」

「いえ、ここまでは簡単なんですよ、実は」

次号、吉田さんの不気味な予言が現実に…たぶん、まだならない。

2/24 驚異の汎用性を実現するオドロキの仕様!?

●協力/どうやらティカジャパン株式会社。

2人でコキコキとアイ デアを書きとめていく

「地味な企画なのに方々で声をかけられて、ちょっと驚いたね」

「そんなことより、具体的な話を話を進めましょう」

心配性の吉田俊介さんは前置きが短い。

「たしかライトアジがメインですよね。そうすると、オモリ20〜40号に対応した素材が中心になります」

紙の中心に円を描いて「ライトアジ」と書く。同じ調子の竿でできそうなのが「ライトマルイカ「カサゴetc」と「イシモチ」そして「カワハギ」。

「ええっ!?カワハギですか?」

「入れちゃいましょうよ。とりあえず」

「まあ、いいですけど……」

●これらを「ライトアジグループ=A」とする。

続いて少し離れた場所に「シロギス」と書く。オモリ15号前後の釣りだ。

シロギス竿を流用できる釣りをあげていく。「アナゴ」に「ショウサイフグ」に「イイダコ」に「ハゼ」に「マゴチ」に「餌木スミイカ」。

●これらを「シロギスグループ=B」とする。

これまで、この2グループは少なくとも2本以上、ツウに言わせれば専用竿含め数本は竿が必要と言われるところ。これらを1本の竿でこなすとしたら……。

「替え穂を付けるしかありませんよねえ、やっぱり」

「おお、替え穂ですか!」

●ライトアジグループ=Aにはパリッとした硬めの穂先。
●シロギスグループ=Bには繊細に動く軟らかめの穂先。

さすが吉田さん。話が早い。

「ですが、竿の調子としてはどちらをベースにするんですか?」

もちろん、ライトアジ系の釣りをしっかりできることが基本。コキコキコキと描いてみる。Aの竿は7:3調子、Bは先だけ軟らかい8:2調子っぽくなるのかも。どう?

「できますよ。では、長さはどうしますか?」

女性やビギナーが使うことを考えれば、取り回しやすい全長1.8メートル以内にしたい。

「とすると、ですね。まず、替え穂はやはり30センチはほしいんですね、構造的に。で、ライトアジをちゃんとやろうと思えば、グリップは脇挟みできるよう、リールシートから最低でも30センチは必要だと思われます。そして胴、ブランクは調子を出すためにも120センチほどはほしいところですから、全長180センチになります」

なるほど。これが基準になるわけだ。

「でも、シロギスにも使いたいんですよね?」

そうそう。スピニングリールに対応させるのは必須。アナゴだってスピニングを使う人が増えている。『つれる竿』のキモでもある。

「だとすれば、トリガーのないリールシートにするのはもちろんですが、グリップが30センチもあると邪魔なんです」

「むむ、そうかあ……」

スピニングリールを使うとき、グリップは20センチくらいのほうが扱いやすい。これは小物釣り全般に言える。そうなると当然、全長は短くなる。

「ライトアジとシロギス用の竿を比べたとき、グリップから下だけで10センチ以上の違いがあるのです。全長、どうします?」

これは困った。

「替えグリップって無理?」

「無理ではありません。ウチにはTSBS、ティカスライドバットシステムがありますから」

「おお、それはいい! ビヨーンと伸びるグリップですね」

「TSBS、スライドバットシステムです(ピシャリ)。18センチ〜35センチにスライドするタイプがあてはまります」

これがメモ。ティカジャパンの竿はこうやって作られている、 わけありません

なんと、グリップが伸縮すればライトアジ系のときはグリップ長めの全長185センチで脇挟みバッチリ。シロギス系のときはグリップ短めの全長168センチで軽快、となるわけだ。

「すごいですね吉田さん! 替え穂だけでもワクワクしてくるのに、グリップがビヨーンと伸びたらもっと楽しいですよ。まるでサンダーバードだ」

「スライドバットシステムです(ピシャリ)。ところで沖藤さん、それでも販売価格は1万円以内
なんですか?」

「もちろんです(ピシャリ)」

次号、早くも暴走気味のプロジェクトはサンプル選びへ

1/24 これがリアル釣りガール企画?

●協力/ティカジャパン株式会社。かも

昼下がりの外神田、つり情報編集部。ティカジャパン株式会社でロッド・リールの開発を担当する営業部・吉田俊介さんとの茶飲みばなしからこの企画は始まった。

「沖藤さん。釣りガールって、どうなんですか?」

「どうもこうも。なんで?」

「いや、ぼくらができることって、何だろうと思って……」

吉田さんはいつもヒザに手を置いて行儀よく話をする。

「女性っていうか、船で一緒になる人ってだいたいオバチャンなんですけど『どんな竿がほしいですか』って質問すると、みなさん『釣れる竿』っておっしゃるんです。ははは」

額の汗をふくのがクセの吉田さんは、いつも困ったように見える。

「作っちゃえばいいんですよ」

「は?」

「だから『つれる竿』を作っちゃえばいいんじゃない?」

「…………」

釣れる竿。何でも釣れる万能竿を、真剣に作るのだ。
しばしお付き合いを。

A
女性や初心者、もしくは船に乗りたいけど船酔いが心配な人には波穏やかな東京湾奥や相模湾がおすすめ。

B
波静かな近場といえば小物釣り。しかも多種多様な釣りがあり1年を通して楽しめる。

C
とはいえ、釣り物が多いぶん、どんな竿を使えばいいか分からない。それぞれ竿を買うのは予算的に無理。ゆえに二の足を踏む、または諦めてしまう。

A、Bまではいいのだが、問題はC。釣り物が多いことは沖釣りの素晴らしい点なのだが、入門者にとっては道具、予算において大きな壁になる。

「カワハギとシロギスって1本の竿ではできないんですか? 同じ船宿から出ているのだから、できるのではないかと思って」
匿名希望の20代後半独身女性が釣具店で迷った末にメールを送ってくる(本当の話)。

皆さんは彼女を笑うだろうか。

話は飛んで15年前。入社したての私は当時の斉藤編集長から半田丸の「沖0号」を渡された。

「とりあえず、これでいい」

そう言われて、ウイリーシャクリからビシアジ、オニカサゴからヤリイカ、ヒラメからコマセダイからカツオまで、オモリ60〜150号の釣りは全部「沖0号」で釣った。

もちろん「沖0号」が最高の万能竿であることは確かだ。でも、それ以上に“この竿1本あればいいのだ”という自信がどれだけ新米記者の背中を押してくれたことか。

あるとき「沖0号」を見たベテラン釣り師が、「これは『つれる竿』だよね」と言ったのをよく覚えている。

今、女性たちに、または入門者に、翌日の乗船を不安ではなく、ワクワクしながら待つことのできる万能竿を提案することはできないだろうか。

「365 日小物釣りができる竿、それが女性や初心者たちに贈る『つれる竿』。そんな竿を作りま
しょう、吉田さん」

「それ、いいですね! 具体的に釣り物、何ですか?」

「ライトアジとカワハギは必須、そうなるとライトマルイカも」

「なるほど」

「キスも釣れるようにしましょう。マゴチ、あ、アナゴも外せない。湾フグも、餌木ス
ミイカも、イイダコにハゼも……」

「……素晴らしい話ですが、クリアしなくてはならないことが多すぎやしませんか?」

「そこを軽やかに飛び越えるから『つれる竿』なんですよ。帯に短したすきに長し、でも、それがいいんです!」

釣りガールから寄せられたSOSメールを見 て唸る吉田さん「やらせじゃないんですよね ?」と用心深い。本当だって!

「はあ……悪ノリしてません?」

「試釣はもちろん、デザインも女性に参加してもらって意見を取り入れましょう」

「それはいいアイデアですね」

「で、販売価格は1万円以内。女性は価格にシビアだから」

「えええ!?」

「1年後の発売を目指して、どんなプロセスで竿が出来上がるのか、連載で紹介しませんか」

「ちょ、ちょっと、返事を待っていただいていいですか……」

その数日後、ティカジャパンから正式な返答がきた。

「やりましょう。1年後の発売を目指して」

かくして『つれる竿』プロジェクトは始動したのだった。

次号、基本コンセプト決定!無茶な要望は実現するのか!?

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